【獣医師監修】猫の舐性皮膚炎は舐めることで悪化する? その原因、治療法と予防法について
猫の毛づくろいには、皮膚や被毛の健康を保つほか、体温調節やリラックスなどの効果があるといわれています。しかし、ずっと同じところを舐め続けていると、舐性皮膚炎(しせいひふえん)になってしまうことも。今回は、猫の舐性皮膚炎の症状と、治療法や予防法について解説します。
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長
舐性皮膚炎の症状
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猫の舐性皮膚炎とは、猫が同じところを繰り返し舐め続け、皮膚に炎症が起きてしまった状態のことをいいます。
舐性皮膚炎の症状
●猫が同じところを執拗に舐め続ける
●舐めた部分が脱毛する
●皮膚の炎症
舐性皮膚炎の多くは、口が届きやすい前足の甲に発症する場合が多く、「肢端舐性皮膚炎(したんしせいひふえん)」と呼ばれます。前足の甲以外にも、前足の上面や太ももの外側、裏、肘、足の甲、尻尾といった部分が、舐める対象になる場合があります。
この病気の大きな特徴の一つに、とにかく同じところをよく舐め続けることが挙げられます。猫の舌は固く、表面はザラザラです。そのため、舐め続けることで患部が刺激され続けることになります。これが原因で脱毛してしまった箇所をさらに舐め続けると、皮膚が赤く炎症します。
やがて、やわらかくもろくなった皮膚がめくれて出血します。それでもまだ舐め続けた場合は、肉がえぐれて骨が露出してしまうことも。こうなってしまうと、患部から細菌に感染するなどのリスクが高くなります。
舐性皮膚炎の原因
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舐性皮膚炎の原因となるのは、以下のようなものが挙げられます。
皮膚への刺激によるもの
虫に刺された、接触性アレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、ケガ、痒み、痛みなど、何らかの刺激が皮膚に加わると、猫は患部を舐めてしまいます。そして、舐めることがやめられなくなるというケースがあります。
猫は、自分のカラダに違和感を覚えたら、舐めることでそれを取り除こうとする習性を持っています。この違和感には異物の付着のほか、傷みや痒みなども含まれます。
しかし、舐め壊してしまうことで、痛みや痒みのような場合でも同じように舐め続けてしまいます。ゴミや虫などの異物であれば取り除くことはできますが、傷や痛みなどは舐めても取り除くことはできません。しかし、猫にとっては違和感がある状態が続いているので、何とかそれを取り除こうとしてさらに舐め続けてしまうのです。
ストレスによるもの
猫の毛づくろいには、気持ちをリラックスさせる効果があるとされています。そのため、何らかの原因で猫がストレスを抱えてしまい、その気分を晴らすためにカラダの一部を舐め続けた結果、舐性皮膚炎を発症することがあるようです。
運動が足りない、留守番ばかりさせられている、同居しているほかの猫や動物との折り合いが悪いなど、ストレスを感じる環境に置かれた時は、人間の貧乏ゆすりと同じように、猫も同じ行動を繰り返してしまうことがあります。
皮膚以外の病気によるもの
何らかの病気などによって皮膚に生まれた違和感を取り除くために、同じところを舐め続ける行動をとってしまうこともあります。
たとえば、関節痛などを患っている猫の場合、その痛みを和らげようと関節部の皮膚を舐めてしまうことがあります。
神経異常によるもの
神経の異常により、四肢などに痛みや麻痺、知覚異常などが生じることで、病的に舐めてしまうことがあります。
舐性皮膚炎の治療法と予防方法
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舐性皮膚炎の治療方法は、症状の進行に合わせた対症療法となり、舐性皮膚炎の原因である「猫が患部を舐め続ける」という行動を抑制しない限り、症状の改善は難しくなります。
患部の保護
患部を清潔にし、衛生材料等で保護します。
エリザベスカラー等の装着
エリザベスカラーや保護服などを着せることで、物理的に舐めることができないようにします。
外用薬による治療
局部に抗生剤、消炎剤などを使用します。
内服や注射による治療
抗アレルギー剤、精神安定剤、鎮痛剤などが必要になることもあります。
外科的処置
壊死した皮膚組織を取り除くなどの整形外科手術を行う場合があります。
基礎疾患への治療
何らかの病気が原因となって、舐性皮膚炎を発症している場合は、基礎疾患への治療を行います。
舐性皮膚炎の予防方法としては、猫がストレスを感じにくいように、猫の飼育環境を整え、日頃からコミュニケーションをとることが大切です。また、少しの変化にも気づいてあげられるように、猫の様子を注意深く観察するようにしましょう。
猫にとって厄介な舐性皮膚炎は、止めたくなくても止められず、自分で自分を傷つけてしまう辛い病気です。愛猫の様子に異変を感じたら、すぐに動物病院に連れて行ってください。また、舐性皮膚炎の改善には、飼育環境の見直しが必須です。愛猫の幸せのために、しっかり向き合っていきましょう。