金魚に白い斑点があったら要注意。白点病について

金魚の体に白い点々がみられた場合「白点病(はくてんびょう)」という病気の可能性があります。様々な金魚の病気の中でも、かかりやすく発症しやすい病気です。

  • サムネイル: 羊田ユウジ
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カラダに白い点のようなものが。これは何?

体表に白い点がポツポツとできるのが白点病です。白粉を振りかけたような小さな点々で、ウオノカイセンチュウ(イクチオフチリウス)という繊毛虫が寄生することによって起こります。このウオノカイセンチュウの寄生によって起こる淡水魚の白点病は、海水魚の白点病と区別するために「イクチオフチリウス症」と呼ばれることがあります。

ウオノカイセンチュウはゾウリムシの近縁で直径0.5ミリ程度の原生動物です。成虫になると、宿主の金魚を離れて水槽内の底砂などで増殖します。金魚に寄生するのは成虫の子どものような状態のホロントと呼ばれる微生物で、白い点はこのホロントです。

ホロントは成虫となって金魚から離れ、底砂で増殖してそのホロントがまた金魚に寄生します。適切な治療を行わずに放置すると、水槽内でこのサイクルが繰り返され、金魚は体液を大量に摂取されることで死に至ります。

ウオノカイセンチュウの保護嚢子(シスト)の殻は、頑丈な非ケラチンタンパク質でできています。この非ケラチンタンパク質は、高温や強いアルカリには弱いのですが、水中では5年や10年で死滅することはありません。

しかも、非ケラチンタンパク質は親水性が高く、ウオノカイセンチュウの保護嚢子内の胞子(3000~4000個)は、いつでも水槽内に飛び出せる構造になっています。

自然界の魚には、ほぼ全数に白点病虫は寄生しています。しかし、魚のカラダ全体に白点が広がり、体液を大量に摂取されることで死に至るのは、水槽などの閉鎖空間で魚を飼育した場合に限られます。

自然界は水槽のような閉鎖空間ではないため、一匹の魚のカラダに大量のウオノカイセンチュウが寄生することはありません。たとえるなら、自然界の魚にとってウオノカイセンチュウに寄生されることは、人間がたまに蚊に刺されるようなものなのです。

白点病の症状

前兆症状として、かゆみによって水槽の壁面や底石などにカラダをこすりつける行動がみられます。次に初期症状として、ヒレの部分にポツポツと小さな白い点が現れます。この症状がみられる頃には、すでに水槽内はウオノカイセンチュウが蔓延している状態です。

白い点は体表に広がり、金魚の動きも鈍くなります。食欲がなくなり、呼吸も荒く、消耗して痩せていきます。放っておくと白い点はさらに広がって、体表全体が白く覆われてしまいます。重症化すると体表の表皮がはがれ、ボロボロになって死に至ります。白い点がエラに感染すると、もっと早い段階で死んでしまうこともあります。

白点病の治療

白点病の治療には、水温を上げる加温治療と塩水浴、薬浴があります。

ウオノカイセンチュウは水温25℃くらいで活動を休止する特徴があります。この習性を利用して、水槽内の水温を加熱ヒーターで28℃~30℃まで上げることで効果が現れます。しかし、この加温治療は金魚の体力も奪うため、1日1℃ずつ慎重に温度を上げる必要があります。

塩水浴と薬浴の併用は効果的です。薬液にはアグテン(マラカイトグリーン水溶液)やメチレンブルー、グリーンFリキッドなどがあります。薬浴用の別の水槽や容器を用意して、感染した金魚を移し、3~5日薬浴させましょう。

さらに食塩濃度0.5%の塩水で塩水浴を行います。0.5%の塩水浴は金魚の体内塩分濃度とほぼ同じのため、金魚自身の自己治癒能力を高めてくれる可能性があります。この薬浴と塩水浴を、金魚の状態を見ながら数回繰り返し、ウオノカイセンチュウを完全に除去します。

また、ウオノカイセンチュウは直径0.5ミリ程度と比較的大きいため、フェルト生地など目の細かいフィルターで水槽の水を濾すだけでも除去効果が期待できます。

そのほか、水中に漂うウオノカイセンチュウの胞子を殺菌し、白点病の蔓延を防ぐ方法としては、紫外線殺菌灯の設置も効果的です。ただし、紫外線殺菌灯は保護嚢子(休眠体:シスト)や魚のカラダに寄生したウオノカイセンチュウには効果がないため、ほかの治療と併用することをおすすめします。

白点病の予防法

上述の通り、自然界の魚ほとんどが白点病虫に寄生されています。そのため、新しい金魚を自分の水槽に迎える場合は、メチレンブルー剤でのトリートメントを行うことが重要です。

たとえ水槽内にウオノカイセンチュウが存在していても、金魚が健康であれば発症しません。金魚が健康であるためには、適切な水温と水質で保たれた環境が必要です。

魚のカラダから離れたウオノカイセンチュウの成熟虫が、シストを形成して仔虫を放出するまでの時間は24時間以内です。すなわち、1個の成熟虫が24時間以内に数千倍の仔虫に増えます。このウオノカイセンチュウの増殖を防ぐためには、常に水槽内の環境を適正に保つことが重要です。

ウオノカイセンチュウは暑さには弱いですが、寒さに強い病原虫です。水換え時や季節の変わり目などで水温が急激に下がると増殖しやすくなるので、加熱ヒーターなどを利用して水温維持に気を配りましょう。

一度白点病を発症した金魚がいた水槽は、徹底的に清掃してリセットします。病原虫増殖の温床となる底砂もよく洗って、天日干ししてください。底砂には有益なバクテリアが存在するためもったいないですが、病原虫の殺菌を優先します。

なお、高い水温で発生する白点病は、低い水温で発生するものと比べて白い点が小さいため、見逃すことがあります。そのため水温が高くなりやすい夏は、金魚がカラダをこすりつけるような動作をしていないか、とくに気をつけてください。

白点病は、病状が進行すればするほど治癒の可能性が低くなります。体をかゆがる仕草を見せた段階で処置すれば治る病気なので、日頃の金魚の観察を欠かさないようにしましょう。

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