【獣医師監修】未去勢のオスは要注意。犬の睾丸に起きる病気、精巣腫瘍の症状と原因
去勢をしていない犬が発症する病気の一つに、精巣腫瘍(せいそうしゅよう)があります。その名の通り精巣の病気ですが、悪性の場合は早急な対応が必要です。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
犬の精巣腫瘍とは?
犬の精巣腫瘍とは、精子を作る精巣に腫瘍ができる病気です。精巣は精子を作るだけではなく、オスらしいカラダを作る男性ホルモンを分泌するという機能も持っています。この精巣に腫瘍ができた場合、悪性の割合は5~20%。悪性の精巣腫瘍は命に関わるので、早急な対応が必要になります。
オス犬が精巣腫瘍を患うと、精巣の腫れや脱毛が起こり、乳腺が張るなど、身体的特徴がメス犬に近づくこともあります。腫瘍は時間の経過とともに大きくなりますが、片方の精巣が明らかに大きくなっている時は精巣腫瘍になっている可能性が高いので、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
犬の精巣腫瘍は、腫瘍のできる場所によって以下の3種類に分かれます。
間質細胞腫瘍
間質細胞腫瘍(かんしつさいぼうしゅよう)は、男性ホルモンを分泌する働きを持つライディッヒ細胞が腫瘍になったものです。男性ホルモンの分泌が少なくなるので、メス犬のようなカラダつきになることがあります。
精上皮腫
別名セミノーマとも呼ばれる精上皮腫(せいじょうひしゅ)は、精子を作る精祖細胞が腫瘍になったものです。この場合は良性であることがほとんどです。
セルトリ細胞腫
セルトリ細胞腫は、精祖細胞に栄養を供給するセルトリ細胞が腫瘍になったものです。このセルトリ細胞腫は悪性になってしまう場合が多いので、早期発見が重要です。
犬が精巣腫瘍になる原因
では、なぜ犬は精巣腫瘍を患うのでしょうか。精巣腫瘍のおもな原因としては、潜在精巣と呼ばれる状態が挙げられます。
精巣は、オス犬が生まれたばかりの頃には露出せず、体内にあります。そして、生後2ヶ月ほどかけて正常な位置まで降下してくるのですが、まれに精巣が体内に収まったまま成犬になってしまうことがあり、この状態を潜在精巣と呼んでいます。
じつは、この潜在精巣の犬とそうでない犬とでは、潜在精巣の犬の方が精巣腫瘍を発症する確率が10倍ほど高くなるといわれています。とはいえ、この潜在精巣の発症率自体は約1%と低いので、一般的には高確率で起こる病気ではありません。ただ、悪化すると命に関わるので、オス犬の飼い主は気に留めておく必要があるでしょう。
犬の精巣腫瘍の治療法
この犬の精巣腫瘍は、未去勢のオス犬限定の病気です。そのため、精巣が腫瘍化した場合には、治療として精巣の摘出(去勢)を行います。しかし、潜在精巣の犬の場合、レントゲンやエコー検査でも精巣の位置を確認できないことがあります。その場合は開腹手術をして精巣の状態をチェックし、去勢するかどうかを決めます。
犬の精巣腫瘍は潜在精巣が大きな原因となります。オスの仔犬を家族に迎えたら、精巣が正しい位置まで降下しているか定期的にチェックしましょう。この潜在精巣は小型犬がなりやすいといわれているので、小型犬を飼っている人はとくに注意が必要です。
また、去勢をすることで精巣腫瘍のリスクは低下しますが、潜在精巣の場合は去勢のために開腹手術が必要になるので、小型犬の場合はとくにカラダにかかる負担が大きくなります。去勢をする前に獣医師としっかり話し合い、愛犬にとって一番リスクが少ない方法を選びましょう。また、潜在精巣は後世に遺伝する要素があるので、原則繁殖に用いないことが重要です。
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