【獣医師監修】犬の喉のあたりに腫れがある。唾液腺嚢腫の症状や予防法について
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【獣医師監修】犬の喉のあたりに腫れがある。唾液腺嚢腫の症状や予防法について

犬とスキンシップをとっていると、喉付近の腫れに気づくことがあるかもしれません。その腫れは、唾液腺に嚢腫ができていることが原因の可能性があります。今回は、この犬の喉の腫れについて解説していきます。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

犬の唾液腺嚢腫とは?

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犬の喉付近が腫れている時に疑われるのは、唾液腺嚢腫(だえきせんのうしゅ)という病気です。犬の唾液腺嚢腫とは、唾液を分泌する器官である唾液腺が風船のように膨れてしまうものです。別名を唾液腺嚢胞(だえきせんのうほう)と呼びます。

“嚢腫”という言葉から“腫瘍”に近いものと想像するかもしれませんが、細胞の増殖によってできたかたまりである腫瘍と違い、嚢腫は細胞以外の何かが細胞を包み込んでできるものです。

困ったことに、この犬の唾液腺嚢腫の原因についてはわかっていない部分が多く、「原因不明」と診断されることも少なくありません。今のところ、唾液腺嚢腫の原因と考えられているのは、遺伝的要因、唾石、外傷の3つです。

遺伝については、トイ・プードルやダックスフンドなどの犬種で発症率が高いといわれているものの、確証はありません。また、唾液腺の内部や唾液管などに結石ができた状態を指す唾石については、唾液管が閉塞することで唾液が溜まり、唾液腺嚢腫を引き起こすと考えられています。そして、外傷によって唾液管が破裂することでも、唾液腺嚢腫になることがあるといわれています。

犬の唾液腺嚢腫の症状

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犬が唾液腺嚢腫になると、唾液腺が膨らんでしまうため、喉付近が見た目でわかるほど腫れあがります。腫れあがった部分に炎症が起きていなければ、大きな痛みはありません。この唾液腺嚢腫は、唾液自体が複数の唾液腺で作られていることから、嚢腫ができた部位によって呼び方が変わります。呼び方には以下のようなパターンがあります。

●頸部粘液嚢腫…顎の下から首の上の部分にある唾液腺に嚢腫ができている状態
●咽頭粘液嚢腫…口の奥にある唾液腺に嚢腫ができている状態
●舌下粘液嚢腫…舌の下にある唾液腺に嚢腫ができている状態
●頬骨粘液嚢腫…目玉の真下にある唾液腺に嚢腫ができている状態
●耳下腺粘液嚢腫…頬の下側、いわゆるエラの部分に嚢腫ができている状態
●複合粘液嚢腫…複数の唾液腺に同時に嚢腫ができている状態

このように、様々な場所に嚢腫ができてしまうという厄介な病気でもあります。

犬の唾液腺嚢腫の治療法

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犬が唾液腺嚢腫を発症した際の治療法としては、溜まってしまった唾液を注射器で抜きとるという方法があります。しかし、この方法では一時的な処置にしかならない場合も多く、再発するリスクも高いため、外科手術によって唾液腺を取り除く場合もあります。

上述の通り、犬の唾液腺は複数あることから、たとえ一つの唾液腺を除去したとしても、ほかの唾液腺が代わりの機能を果たしてくれるので大きな問題にはならないといわれています。また、唾液腺嚢腫に炎症を起こしている場合には、抗生物質や抗菌薬を投与して炎症を抑える処置もとられます。

犬の唾液腺嚢腫は、原因がはっきりしていない厄介な病気です。原因がわからないということは、明確な予防法がなく、ある日突然犬の喉の周囲が腫れていることに気づくというケースもないわけではありません。

唾液腺嚢腫になるリスクを低下させるためには、唾液腺が詰まらないよう、犬の首にかかる負担を減らすことが重要です。また、どの病気もそうですが、少しでも犬のストレスにつながるようなことは排除するようにしましょう。

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