【獣医師監修】トイ・プードルの椎間板ヘルニアの症状と予防法
小型犬がかかりやすいといわれている、椎間板ヘルニア。この椎間板ヘルニアになると、犬にはどのような症状が現れるのでしょうか。今回は、トイ・プードルの椎間板ヘルニアについて解説していきます。
- 更新日:
監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
椎間板ヘルニアってどんな病気?
Lim Tiaw Leong/Shutterstock.com
そもそも、犬の椎間板ヘルニアとは、どのような病気なのでしょうか。
椎間板ヘルニアを理解するには、まず椎間板とは何かを知らなければいけません。椎間板とは、犬の脊椎と脊椎の間にクッションのように挟まっている組織のことで、そのクッションがつぶれたり、飛び出たり、変形してしまうことを 椎間板ヘルニアと呼びます。
では、椎間板にこのような異常が生じる原因は何なのでしょうか。多くの場合、事故などの外部からの衝撃、食べすぎ・肥満による腰への負担の増加、高齢化による組織の老化などが原因となります。
これらの要因により椎間板が損傷すると、その中にある髄核(ずいかく)という組織が外に飛び出し、神経を圧迫することで、痛みが生じます。
犬が椎間板ヘルニアになると、以下のような症状が出ます。
腰を触ると痛がる
椎間板ヘルニアの中でも比較的症状が軽度な場合は、腰や背中を触れると痛がる場合があります。また、痛がる部分が熱っぽく感じる場合があります。
不自然な歩き方
いつもは軽快に歩いている犬が、よろよろしてしまい、まっすぐ歩けなくなります。また、何とかまっすぐ歩ける場合でも、非常にゆっくり歩くようになります。
なかなか動きたがらない
基本的に、トイ・プードルは活発な犬種なので、散歩やボール遊びなどの運動が大好きです。しかし、いつもは遊ぶことが大好きなトイ・プードルが動きたがらなくなったり、散歩を嫌がったりする時は、椎間板ヘルニアになっている可能性があります。
また、犬が動きたがらない時は、椎間板ヘルニア以外の病気を患っている可能性もあるので、すぐに動物病院で診てもらうようにしましょう。
足や下半身の麻痺
犬が椎間板ヘルニアになると、初めのうちは背中や腰に痛みを感じますが、さらに症状が悪化すると麻痺を起こし、次第に痛みを感じなくなります。この状態になると、犬は足を引きずったり、立ち上がれなくなったりします。
トイ・プードルは椎間板ヘルニアになりやすい?
K.INABA/Shutterstock.com
トイ・プードルは「軟骨異栄養症犬種(なんこついえいようしょうけんしゅ)」(生まれつき椎間板が変性する遺伝子を持っている犬種)の一種で、世代を問わず椎間板ヘルニアになりやすいといわれています。
椎間板以外のヘルニア(首など)の発症リスクはさほど高くありませんが、椎間板ヘルニアに限っては、ほかの犬種以上に注意が必要です。
ちなみに、トイ・プードル以外の軟骨異栄養症犬種としては、ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギーなどの胴長短足犬種、チワワやヨークシャー・テリアなどの超小型犬のほか、柴犬やジャーマン・シェパード、レトリーバー犬種などが挙げられます。
これらの犬種を飼育している場合も、日頃から椎間板ヘルニアの予防に努めることが重要になります。
椎間板ヘルニアからトイ・プードルを守るには
Aarontphotography/Shutterstock.com
トイ・プードルは椎間板ヘルニアになりやすい犬種ではありますが、飼育環境を整えることで発症リスクを軽減することができます。
まず、フローリングのような滑りやすい床はトイ・プードルの足腰に負担がかかりやすいので、絨毯やマットを敷いて、走り回っても滑りにくい環境を作ってあげましょう。また、階段の上り下りはもちろん、ちょっとした段差の上り下りも椎間板ヘルニアのリスクを高めます。階段や段差は、抱っこして移動させるようにしましょう。
そのほか、肥満にも注意が必要です。体重の増加は、トイ・プードルの背骨に負担をかけ、椎間板ヘルニアの発症リスクを高めます。ちょっと太って来たな、と感じた時は、食事量を減らしたり、カロリーが低いエサに変えたりすることで、体重を適正に戻してあげましょう。
このように、飼い主の行動次第では、トイ・プードルが椎間板ヘルニアになるリスクを軽減することができます。可愛いトイ・プードルにつらい思いをさせないためにも、日頃から椎間板ヘルニアの予防に努めましょう。