【日本犬代表格・柴犬】世界で人気の『柴犬』の歴史、性格、しつけ、かかりやすい病気は?
日本犬代表格・柴犬。日本に限らず世界でも人気の柴犬について。歴史や特徴、性格などを一挙ご紹介!
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1.柴犬【概要】
日本古来から姿を変えることなく、1936年天然記念物に指定された柴犬。
日本国内において多くの愛好家から親しまれ、昨今ではその人気は海外にも波及。「Shiba Inu」として世界中で愛されている、日本犬の代表格となりました。
ここではそんな柴犬について、歴史や特徴、性格などを一挙ご紹介します。
2.柴犬【歴史】
柴犬の祖先である日本犬の歴史はたいへん古く、およそ10,000年以上も前、縄文時代までさかのぼります。
縄文犬
日本においては、愛媛県久万高原町にある上黒岩岩陰遺跡から出土した犬の骨が知られています。他、日本各地にある遺跡や貝塚などからも犬の骨は見つかっており、これらが柴犬をはじめとする日本犬の祖先といわれています。
千葉県船橋市にある藤原観音堂貝塚から発掘された骨格をもとに、縄文犬の復元が試みられました。この縄文犬は収容された飛ノ台史跡公園博物館にちなんで「飛丸」と名付けられました。この犬は体高は40センチから45センチ程度で、現在の柴犬に近い容姿を持っています。
縄文犬は主にシカやイノシシなどの狩猟に用いられていたと思われます。また多くの犬は丁寧に埋葬された状態で見つかっています。中には骨折などのケガを治した痕跡のある個体もおり、当時から大切に扱われていたことが分かります。
縄文犬とニホンオオカミ
犬はオオカミが家畜化された動物ということは広く知られています。日本にはニホンオオカミ(北海道にはエゾオオカミ)がおり現在では絶滅してしまいましたが、縄文犬は体高80センチ以上と大型であった彼らとは違い小型であることから、オオカミを家畜化したという説は否定されています。中国や朝鮮半島でみられる古代犬の体格に似ており、大陸の犬が渡ってきて発展をとげたと考えられています。
弥生犬の登場
縄文時代の終わりごろ、大陸から新たに稲作や鉄器などが伝えられて弥生時代が始まり、それとともに新しい犬も海を渡ってきました。この犬の血が従来の縄文犬と混ざり合い、弥生犬が登場します。
この時代は本格的な農耕が始まりますが、弥生犬は縄文犬と同様に狩猟に使用されていました。
柴犬の誕生
柴犬のもとになった犬がどこでどのように誕生したかは定かではありませんが、日本犬は縄文犬や弥生犬から各地で発展して生まれていったと考えられます。同じ巻き尾の特徴を持つ、北方のスピッツの血も入っているといわれています。古墳時代に入って朝廷ができると、組織的に犬を養育する向きも出てきました。
「日本書紀」では、安閑天皇2年(538年)、屯倉(みやけ、朝廷が設置した直轄地)が全国に配するとともに、犬養部(いぬかいべ)が設置されたと書かれています。犬養部では屯倉を小動物などの被害から守り、警備するために犬を養育していたと考えられています。
江戸時代になると大名などの間で洋犬を飼育するのが流行しますが、日本犬に与えた影響は限定的であり、古来の姿を保った日本犬が数多く残っていました。
明治時代~昭和初期
明治時代になると、本格的に洋犬が日本に入ってきます。文明開化の風潮のもと、日本犬も欧化すべしとの考えが広まり、意図的な交雑が広く行われました。時には日本犬の虐殺まで行われることもあり、このため大正時代に入るころには特に都市部においては日本犬はほとんど姿を消してしまいました。
こうした現状に危機感を覚えた洋画家の斎藤弘吉(ひろきち)は1928年、日本犬の絶滅を阻止するために日本犬保存会を立ち上げます。そして1931年から37年にかけて秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬の6犬種が順番に国の天然記念物に指定されます。
終戦~日本犬の復興
しかし間もなく太平洋戦争がはじまると、犬たちの多くは食糧難や、物資として軍に供出されたりしたことによりさらに数を減らします。終戦後の1952年には犬ジステンパーが大流行するなどさらに苦難の時代が続きました。
このため、各地に残っている柴犬の中から優秀な個体を選び、掛けあわせて犬種の保存を図ろうとする気運が高まります。やがて島根県産のオス「石号」と四国産のメス「コロ号」の2匹が長野県に持ち込まれて繁殖が試みられました。この石号とコロ号の血を引く犬は生まれた土地から信州柴犬と呼ばれ、現在見かける柴犬の多くを占めています。
これにより柴犬は絶滅の危機を免れ、現在にかけて日本犬中で人気ナンバーワンの地位が確立されます。その一方でかつては各地域ごとに違っていた容姿の特徴が薄れてしまい、これを復活させようとする動きも出てきます。
3.柴犬【体の特徴】
たぬき顔ときつね顔
柴犬にはたぬき似た顔のものときつねに似た顔のものがいます。
たぬき顔の柴犬は「弥生柴犬」とも呼ばれ、弥生時代の犬の特徴を備えているといわれています。
一方、きつね顔の柴犬は「縄文柴」と呼ばれます。縄文犬の特徴を受け継いでいるといわれています。
弥生柴が鼻が短く丸っこい顔をしているのに対し、縄文柴は額から鼻筋にかけての部分が長く、細長い顔つきをしています。弥生柴は骨太でがっしりした体つきをしていますが、縄文柴はほっそりとしたスリムな体型です。また縄文柴はよりオオカミに近い特徴を持っているためか、歯の数が弥生柴より多いです。
柴犬の愛犬家団体は国内にいくつかありますが、JKC(ジャパンケネルクラブ)や日本犬保存会は弥生柴を推奨し、柴犬保存会や柴犬研究会は縄文柴を推奨しています。
体高・体重
体高:35~41cm
体重:8~10kg
柴犬は日本犬の中では最も小さい品種であり、全犬種の中でも小型犬と呼ばれます。ただしチワワやヨークシャーテリア、シーズー、ミニチュアダックスフントなどと比べると大きいため、中型犬といわれることもあります。このため、マンションなど犬の入居に大きさの制限がある場合は注意が必要です。
被毛
犬の毛には皮膚を覆っている下毛(アンダーコート)とそれを覆うように生えている上毛(オーバーコート)の2種類があり、このうち下毛のみが生えている場合をシングルコート、下毛と上毛の両方が生えている場合をダブルコートと呼びます。
柴犬の被毛はダブルコートとなっています。春と秋には2回の換毛期があり、毛が生えかわります。柴犬がダブルコートになったのは夏は暑く冬は寒い日本の気候に適応したためだといわれています。
毛色
柴犬の毛色にはおよそ4種類があります。
・赤毛
薄い赤い色の被毛をもった柴犬です。最も多い毛色であり、柴犬と聞くとこの色を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。口の周りや胸、お腹、足元、尻尾の下側などに白い毛が生えており、これは裏白(うらじろ)と呼ばれます。
毛の赤みは年を経るごとに薄くなっていき、また赤毛同士をかけ合わせ続けることによっても色素は薄くなります。そのため、定期的に黒柴をかけ合わせることによって色の濃さを維持しています。
・黒毛
全身が黒い毛で覆われている柴犬が黒毛です。黒毛の柴犬の毛は正確には黒ではなく鉄さび色とよばれ、光沢がありません。赤毛同様に裏白があり、また両目の上には白い斑点があって、これは「四ツ目」といわれます。四ツ目があるのは急所である目を外敵から守るためであるといわれています。
黒毛の柴犬は赤毛より珍しく、全体の10%程度だといわれています。
・白毛
白い毛を持っているのが白柴です。元々は赤毛どうしをかけ合わせ続けて色素が薄くなった結果現れる毛色であり、耳の先など一部のみに赤毛が入っていたり、白というよりはクリーム色の毛をもっていたりするケースも多いようです。
このように意図的に作出された毛色ではないため、ドッグショーでは白毛の柴犬を認めていないところも多く、白毛の柴犬は繁殖を行っていないブリーダーもいます。ちなみにソフトバンクのCMの「お父さん犬」ことカイ君は白毛の柴犬ではなく北海道犬という別品種です。
・胡麻毛
非常に珍しい毛色として、赤・黒・白の三色が混じりあった胡麻毛といわれる柴犬も存在します。血統をよく理解していなければ生み出すのは難しいとされ、また成長するに従って赤毛が優勢になってしまうこともあるので、希少な毛色となっています。
3色のうち赤の割合が多ければ赤胡麻、黒の割合が多ければ黒胡麻と呼ばれます。
尻尾
柴犬の尻尾はくるんと巻いた「巻き尾」が一般的ですが、非常に多くの種類があります。
巻き尾の中でも「左巻き」と「右巻き」があり、さらに巻いている回数や程度に応じた分類もあります。尻尾の巻き方は体を振って変えていたりすることがある、という証言もあります。
また、尻尾が巻いていない柴犬も時おり見かけることがあり、これは「差し尾」と呼ばれています。水平な尻尾にも種類がいくつかあり、上方向を向いているものは太刀尾、細いものはごぼう尾と呼ばれます。
日本各地の柴犬たち
現在見かける多くの柴犬は信州柴犬の血を引いていますが、その一方で各地ごとの特徴を保存しようとする動きがあったのは先に述べた通りです。そんな日本各地に息づく柴犬たちを紹介します。
・山陰柴犬
鳥取県や島根県などの山陰地方で古くから飼われていた柴犬です。韓国の珍島犬や済州犬と近しい関係にあることが分かっており、弥生時代に朝鮮半島から渡ってきた犬が縄文犬と交配してできた品種だと考えられています。
容姿の特徴としては、顔つきは縄文柴に近く、耳は頭の上にあり前向きです。一般的な柴犬よりも足が長く、尻尾は差し尾の出現率が高く巻き尾でも緩めの巻き方をしていることが多いです。被毛は赤のみで、「淡赤(うすあか)」といわれる色素の薄い赤色になることもあります。
かつての山陰柴犬には2つの系統があり、それぞれ生息地の名前をとって石州犬(石見)、因州犬(因幡)とよばれていました。しかしやはり戦時中から戦後にかけて絶滅の危機に陥ったため、2つの系統をかけ合わせて存続が図られ、現在では系統ごとの違いは失われてしまっています。現在残っているのは250頭ほどで、依然として絶滅の危機にあるといわれています。
・美濃柴犬
岐阜県で古くから飼育されてきた柴犬です。一番の特徴は「誹赤(ひあか)」と呼ばれる真っ赤な毛色で、濃さに応じて濃赤・赤・淡赤と呼ばれます。この毛並みは、朝日や夕日に照らされると燃えるように輝き、なんともいえない美しさを見ることができます。顔はたぬき顔、尻尾は巻き尾が多く、弥生柴の特徴を持っています。
やはり戦時中に数を減らし、現在でも飼われている頭数は200頭前後と絶滅の危険は高くなっています。
・川上犬
長野県南佐久郡川上村で保存されている日本犬で、信州柴犬の一種とされています。信州川上犬、川上狼犬、梓山犬などと呼ばれることもあります。メスを山の中に置いてニホンオオカミと交配させたという伝承が残っており、とてもワイルドな顔つきをしています。
毛色は黒、赤、茶、白が混じっています。山陰柴犬や美濃柴犬と同様に全国に300頭程度しかいない貴重な犬種であり、地元の川上村では保護育成が行われています。
豆柴とは?
普通の柴犬よりも体が小さい柴犬として、「豆柴」の名前を聞くことがあります。
豆柴は体が小さいため、高齢者や子供でも世話がしやすい犬として近年人気が高まっています。1955年ごろから京都府宇治市の樽井荘鷹倉という犬舎が独自にこの犬の繁殖をはじめました。
しかし、「豆柴」という公認の犬種は正式には存在しません。豆柴の名前が浸透するとともに、幼少期に食事量を抑えて小さくしたり、単に体格が小さいだけの柴犬を豆柴と称して販売されるケースが増えてきました。こうした犬は成長するにしたがって体が大きくなってしまったり、健康に問題を抱えていたりすることがあります。
また、日本社会福祉愛犬協会というNPO法人は、樽井荘の血統を保持している大阪市高槻市の摂州宝山荘を調査し、血統が固定されたとして2008年に独自に公認を行いました。しかし、最大の柴犬公認団体である日本犬保存会は、日本犬の血統に混乱を招くとして日本社会福祉愛犬協会予備登録可能な団体のリストより削除しています。
豆柴を飼いたいと考えるのであれば、このような事情は十分に考慮しましょう。
4.柴犬【性格・気質】
■忠実で従順
■勇敢で行動的
■利口
日本犬に特有の性格として、賢く飼い主に対しては忠実で従順、それでいて勇敢です。こうした特性のため、とても番犬向きの性格をしているといえます。ただし、頑固で独立心が強く、飼い主以外の見知らぬ人や犬には簡単にはなつかない面もあります。
また、西洋の猟犬とは違って自分で獲物を追う猟をしていたため、動くものを追って捕らえようとする本能が強く表れることがあります。
5.柴犬【しつけ・飼い方】
柴犬は日本犬に特有の頑固さを持っているため、洋犬に慣れた人でもしつけには手間どることがあります。そのため、基本をしっかりとおさえておくようにしましょう。
しつけは子犬のころが重要
どんな犬でもそうですが、しつけは子犬のころから行っていくことが重要です。生まれてから3か月程度までを社会化期といい、この時期までに適切なしつけを施されなかった犬は将来的にしつけにくい犬になってしまう可能性が高くなります。
しつけのポイント
柴犬は特に子犬のころはとてもコロコロしていてかわいらしいですが、過度な甘やかしはNGです。指示した通りのことができたらうんと褒めてあげるようにしましょう。柴犬は賢いので、「これをすれば褒めてくれる」というのをしっかりと覚えることが出来ます。反対に、イタズラをしたときなどの叱り方が中途半端だと「イタズラをすれば構ってくれる」と間違えて覚えてしまうので、メリハリを心掛けるようにしましょう。
6.柴犬【お手入れ】
先述したように柴犬はダブルコートの被毛を持っているので、春と秋には換毛期があります。換毛期になると驚くほど毛が抜けるので、ブラッシングは毎日丁寧に行ってあげましょう。ブラッシングは嫌がる犬もいるので、できれば子犬のころから少しずつラバーブラシやスリッカーブラシ、コームなどに慣らしてあげてください。
7.柴犬【かかりやすい病気】
柴犬は日本の温暖湿潤気候に強く、特定の発症しやすい病気の遺伝子も見られませんが、それでも多く発症する病気はあるので知っておきましょう。
皮膚炎
皮膚疾患は柴犬に最もよく見られる病気です。室内飼いをする家庭が増えてきたのに伴い、特に増えてきたのがアトピー性皮膚炎です。特定の食べ物や花粉、ほこりなどが原因で皮膚にかゆみや赤みが起き、膿が出ることもあります。アレルギー物質は血液検査で特定することができるので、判明したら原因物質を取り除いてあげましょう。また、ブラッシングやシャンプーで皮膚や被毛を清潔にしてあげることで症状は軽減します。
加齢に伴う病気
犬の平均年齢が伸びて老犬でいる期間が増えるに従い、人間と同じように加齢に伴う病気が増えてきました。白内障、認知症、僧房弁閉鎖不全症、膝蓋骨脱臼などがそれにあたります。日ごろから犬の様子をよく観察し、いつもと違う様子があったらすぐに動物病院に連れていってあげることが大切です。
8.柴犬【まとめ】
柴犬の歴史をはじめ、体の特徴や飼い方、性格などを一挙に見てきました。柴犬のこと、よく知っていただけたでしょうか?
柴犬は日本犬の中でも比較的飼いやすい犬種で、飼い主以外には簡単になつかない従順さは魅力的です。