【獣医師監修】猫のひげの役割はとっても大事! 状態とそのサインとは
鼻の横にあるぷっくり膨れた「ひげ袋」から左右に伸びる猫のひげ。抜けたり、折れたり、切ったりするとどうなるのでしょうか?
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
ひげは周辺環境をとらえるセンサー
猫の顔を見つめると、頬の左右だけでなく、目の上とあごの下にも体毛以外の毛が生えていることに気がつきます。じつはこれもれっきとしたひげ。ひげの根元部分には神経が集中しているため、わずかな動きも敏感に感じ取ることができます。上下左右のひげの先端を線で結ぶと丸い円になりますが、猫が空間認識能力にすぐれている理由はそこにあります。
猫は顔が通れば、どんな狭いところも通れるといわれていますが、本当にその場所を通り抜けられるかどうか、ひげを使って確認します。一度顔を入れて通るのをやめた時は、猫がそこは通り抜けられないと判断したためです。
ひげの能力はそれだけではありません。たとえば、猫が暗闇の中でぶつからずに歩けるのも、ひげが空気の流れを感知し、障害物の有無を判断しているからです。ネズミなどの獲物をつかまえる時も、ひげで空気の振動を感じ取り、正確に飛びかかって仕留めます。目隠しされても、獲物をつかまえることができたという研究報告もあり、ひげは高度なセンサーとして大きな役割を果たしているのです。
そのほか、目の中にゴミが入るのを防いだり、ジャンプする際に風向きや風速を感知したりと、猫にとってひげは生きていくための大切な道具。それだけに、ひげを失うと、平衡感覚や方向感覚が鈍くなり、生活に支障をきたしてしまいます。中には精神的に不安定になる猫もいるそうなので、抜いたり、切ったりしてはいけません。ストーブなどの暖房器具に近づけすぎると、焦げたり、先端がくるくると丸まってしまったりするので気をつけましょう。
ひげの状態でわかる猫の気持ち
鼻の左右にあるぷっくりと膨れた「ひげ袋」の正式名称は、ウィスカーパッドといいます。ひげを支える土台のようなものですが、何とも愛らしい形から、肉球に次いで猫好きたちに人気のあるパーツです。この膨らみには血液がたくさん入っており、興奮した時に膨らむのは血液とそこに集中している神経の働きによるもの。このウィスカーパッドとひげの動きを見れば、猫が置かれている状況や気持ちがよくわかります。
ひげが上を向いている
ひげが10時10分の形になって、ピンと立っている時はうれしい気持ちを表しています。
ひげが横に広がっている
興奮および警戒している時は、ひげを広げて周りの情報を集めようとします。
ひげが前に突き出ている
怒っている時は、ひげが前に突き出て、ひげ袋も膨らんでいます。耳は立っている時、後ろに寝かせている時と、怒りの度合いによって変わってきます。
ひげが前方に向いている
猫はもともと好奇心旺盛な動物。何かに興味を持ち、心を奪われた時はひげが前方を向き、ひげ袋も膨らみます。
ひげが下に垂れている
リラックスしている時、ひげはだらんと下に垂れています。体調が悪い時も垂れているので、よく観察してみましょう。
ひげが後ろ向きになり、頬についている
猫はエサを食べる時、エサがひげにつかないように、ひげを後ろ向きにします。怖がっている時、寝ている時も同じようにひげを後ろ向きにしています。
ひげが抜ける
猫のひげはおよそ半年サイクルで生え変わります。数本ひげが落ちていても心配ありませんが、大量に抜け落ちたひげを見つけた場合は、病気の可能性が高いと考えた方がよいでしょう。原因はストレス、外部寄生虫や細菌感染などによる皮膚炎、免疫機能の低下などがあります。
猫のひげは白いイメージですが、じつはカラダの毛色に対応している場合が多いようです。多頭飼いしている人は、見比べてみるのもおもしろいかもしれません。猫のひげをお守りにすると金運アップや厄除けになるという話もあり、抜け落ちたひげをしまっておく「猫のひげケース」も売っているそうです。猫のひげは抜け落ちても役に立つようですね。
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