【獣医師監修】猫の驚異的なジャンプ力! 身体能力の秘密について

低いところから高いところへ、軽々と飛び移る猫の姿はまるで忍者。ジャンプに失敗しても、何食わぬ顔でふるまうその仕草も微笑ましいものです。

  • サムネイル: PECO編集部
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

ジャンプ力の秘密は後ろ足にあり

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すばしっこい動きに、優れたバランス感覚。見た目の愛らしさとは裏腹に、猫はオリンピック選手もうらやむような高い身体能力の持ち主です。とくにジャンプ力は驚異的で、自分の身長の約5倍の高さまで跳べるといわれています。たとえば、170㎝の人だと約8mの高さまでジャンプできる計算です。これはマンションの3階に相当する高さなので、人間のジャンプ力とは比べものになりません。

そのカギとなるのが後ろ足です。それにカラダのしなやかさ、関節のやわらかさが加わって、驚異的なジャンプ力が生み出されるというわけです。猫のジャンプ力は、後ろ足が長くて体脂肪率が低いほど大きくなるという研究結果もあり、後ろ足が重要な役割を果たしていることがわかります。

猫の祖先はもともと木が生い茂った森で狩りをしながら生活していたため、木を上り下りしたり、木から木へ跳び移ったりするために強い後ろ足を手に入れたといわれています。そのため、ジャンプ力だけでなく、本気で走れば時速50㎞近いスピードを出すことも可能です。猫の後ろ足を触ると極端に嫌がるのも、そこが大切な箇所だと知っているからなのかもしれません。

着地する時は必ず4本足の理由

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ジャンプ力とともに必要なのがバランス感覚です。跳ぶ力がすごくても正確に着地できなければ、ケガをしてしまいます。猫はどんな体勢から跳んでも必ず4本足で着地できる「空中立ち直り反射」という能力を備えています。猫が高いところから落ちても無傷だったり、軽いケガですむのはその能力があるからです。

欧米には「猫は9つの命がある」ということわざがあります。昔の人も猫の身体能力の高さに驚き、称え、そのように表現したのかもしれません。ただし、「空中立ち直り反射」はカラダをうまく回転させて着地するため、低いところから落ちた時の方が、回転するための距離が足りず、ケガをすることがあるそうです。

失敗すると、ジャンプできなくなるって本当?

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森で生活していた時代と違い、家の中には猫の爪が役に立たない、ツルツルと滑る家具ばかりです。それもあってか、跳び移ろうとして失敗する猫の動画がネット上にあふれています。どれもクスっと笑えるものばかりですが、失敗の原因はほかにもあるようです。

ジャンプがうまくできない、あるいはジャンプをしないのは、一つに関節痛の問題や爪が割れるなど、病気やケガで足に痛みがあることが考えられます。その場合は、傷が癒えれば問題ありませんが、深刻なのは運動不足で肥満気味の猫が増えていること。最近はタンスの上から飛び降りただけで骨折してしまう猫もいるので、健康面とともに食事面の管理も重要です。

病気やケガ、肥満のどれにも当てはまらない場合は、ジャンプの失敗が原因かもしれません。もともとジャンプには自信があっただけに、一度失敗するとまた失敗するのではないかと恐れ、跳ばなくなる猫もいるそうです。学習能力が高いともいえますが、繊細でストレスを感じやすいのも猫の特徴です。

確かに家の中で飼っている分には、ジャンプの能力が衰えても、猫にとって困ることはありません。実際、外で獲物を捕まえたり、他の猫と縄張り争いをしたりすることもなくなり、本来猫が備えていた敏捷性や瞬発力、バランス感覚などを使う機会は激減しています。家の中では限られるかもしれませんが、猫が元気に活動できるよう、おもちゃを使って遊んだり、キャットタワーを設置したりして、できるだけ猫の本能を刺激するような環境をつくってあげましょう。持って生まれた能力を守ってあげるのも飼い主の役目なのです。

生活環境が変われば、必要のない能力は少しずつ減っていくものなのかもしれませんが、ネコジャラシで遊んだ時にふと見せる猫の狩猟本能は、まさに「猫らしさ」の一つ。猫から「猫らしさ」をなくさないためにも、カラダを使う遊びを取り入れて、猫本来の身体能力を磨いてあげたいものですね。

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