知っておくと愛犬のキモチがわかる!? 犬の共通言語 カーミングシグナル
眠くないはずなのにあくびをする、やたらと鼻を舐めている……など、愛犬がこんな様子を見せていることはないだろうか。これらは実は愛犬が発している言葉のひとつ。愛犬の気持ちを理解するためにもぜひ知っておこう。(チワワスタイル Vol.25より)
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何気なく見えるしぐさから犬は気持ちを伝えている
自分がどんな気持ちでいるのかを相手に伝えたり、相手とのコミュニケーションをとる際に人間なら音声として言葉にする場合がほとんどだ。
犬は人間とは違い、音声よりも、体の動きを使って言葉を発している。そんな犬が発する言葉の中でも、カーミングシグナルと呼ばれているものがある。カーミングとは「落ち着かせる」という意味を示す。
犬はもともと群れをつくる習性があり、他者とどう関わるかによって生き延びてきた動物。他者との不要な争いを避けるために、これらを犬の共通言語として使い、コミュニケーションをとっているのだ。
普段、何気なく見ている愛犬のしぐさや行動の中にも、愛犬が発する言葉が隠されている。どんな気持ちなのかよく観察してみよう。
①自分を落ち着かせる
ストレスを感じている自分の気持ちを表現
犬がボディランゲージで気持ちを表現する場合、まず『自分に対するもの』が挙げられる。以下のようなしぐさや行動が見られる時は、怖い、嫌い、緊張など何らかのストレスを感じている場合が多い。自分の気持ちを落ち着かせるために行っているのだ。
例えば、散歩中に向こうから苦手な犬がやってきて緊張している、掃除機など大きな音が怖い、自分はもう飽きているのに飼い主がまだトレーニングを続けている、など、ストレスと感じる理由・原因はさまざま。どんなことをストレスに感じるかは、犬によって個体差がある。見極めてあげよう。
体を掻く
とくに体に異常がないのに、やたらと足で体を掻く。緊張した時や興奮した気持ちを体を掻くことで静めている。
鼻を舐める
ペロペロと自分の鼻を舐めるのも、犬が何らかのストレスを感じた時によく見せる行動のひとつ。
半目になる
怖いこと嫌いなことから気持ちをそらしたい時に、半目になることも。ある意味自分の世界に閉じこもった状態!?
あくびをする
眠くないはずなのに、大きなあくび。あくびをすることで、自分の気持ちを落ち着かせている。
フリーズする
嫌いなものを見た時、逃げ出す場合もあるが、体が固まってしまうことも。これもカーミングシグナルのひとつ。
片前足を上げている
こんなしぐさもカーミングシグナルの意味を示している。ただ、この場合は軽度のストレスのことが多い。
その他にも…
◆パチパチとまばたきをする
◆体をブルブルと振る
◆床や地面のにおいを嗅ぐ
②敵意がないことを示す
ボディランゲージを通して相手へ伝える行動
前述したように、犬はもともと他者との不要な争いを好まない動物。そのため、相手に対して「あなたに敵意はありませんよ」とボディランゲージで伝えることがある。相手の犬がどういう行動に出るかわからない、でも自分は一緒に遊びたい or 刃向かうつもりはない、などの場合に、以下のようなしぐさや行動が見られる。
また、カーミングシグナルは自分の敵意がないことを示すだけでなく、相手に「落ち着いてくださいね」と伝えている場合もある。犬のシグナルが誰に向けて発信されているのかは、その犬の置かれている状況で判断する必要がある。
フセをする
フセをして体を低くするのは、私は何もしませんよと相手に服従している気持ちを示している。
人の顔や口を舐める
相手の顔や口を舐めるのは、親しみを込めていることもあるが、興奮している相手を落ち着かせる意味の場合も。
シッポを下げて振る
犬はシッポでもさまざまな気持ちを表現する。シッポを下げて振る場合は、敵意がないことを示している。
目をそらす
初めての相手にいきなり目を合わせると相手に警戒されることもあるため、最初は目をそらしていることが多い。
体を縮める
自分の体を縮め、自分の存在を小さくすることで、相手に警戒心を与えないようにしている。
においを嗅ぐ
においを嗅ぎながら相手に近づくというのも、相手に警戒されないために行うカーミングシグナルのひとつ。
その他にも…
◆ゆっくりとした動きで近づく
◆お腹を見せる
◆相手に対して背中を向ける
カーミングシグナル 犬の共通言語
Q 普通のしぐさとどう区別をつけたらいいの?
A あくびや体を掻くしぐさなどは、実際に犬が眠い、痒いという場合もあります。カーミングシグナルなのかどうかは、やはりその時の犬が置かれている状況で判断することが大切。よく観察してあげましょう。
Q カーミングシグナルを出したらダメなの?
A 人間社会と同様、犬も暮らしていくうえで必ず多少のストレスはかかります。どうしてもシグナルが出てしまう場合もあるので、出たら即NG とはなりません。トレーニングの最中、頻繁にあくびをする、体を掻くなどあったら、嫌がっている可能性も。方法を変えてみるといいでしょう。
Q 犬種や性格によって出やすさに違いはあるの?
A 犬種によって出やすさの差はないと思います。性格面でいえば、どちらかというと、相手に対してアクションを起こしやすい積極的な性格の犬に出やすく、シグナルの種類も豊富な傾向があります。年齢も若い方が出やすいようです。
Q 他の犬と目を合わせない。すぐにその場を離れた方がよい?
A 愛犬が、明らかに他の犬が苦手とわかっていたら、離れてもいいですが、その場の状況や愛犬の性格によって判断しましょう。他の犬に興味を持っているならば、しばらく様子を見ておきます。
Q カーミングシグナルを出さない犬もいる?
A まったく出ないという犬はいないと思います。ただ、社会性の低い犬は出にくいかもしれません。犬同士のコミュニケーションツールでもあるため、犬との接触が少なかった場合、わかっていないこともあります。
Q 飼い主も応用して使ってもいいの?
A 犬に近づく時にゆっくり動いたり、いきなり目を合わせないというのは、犬同士だけでなく、人間も犬に対して使えるものです。ただし、自分が好意を持っている人間に対しては、目を合わせてくる犬も多いようです。
Text:Hiromi Mizoguchi
監修:中村太先生
体罰を行わないイギリス式の家庭犬の育て方をベースに、犬の育て方やしつけ、トレーニングなどの指導を行っている。いぬのようちえん「ナカムラドッグスクール」も主宰。
TEL:04-7187-0928 http://nakamura-ds.com/
※本企画の写真はすべてイメージカットです。実際に犬がストレスを感じていたり、不安感を感じているとは限りませんので、あらかじめご了承ください。