猫びより
【赤ひげ先生インタビュー】保坂敏

【赤ひげ先生インタビュー】保坂敏

(猫びより 2018年3月号 Vol.98より)

  • サムネイル: 猫びより編集部
  • 更新日:

猫の気持ちに寄り添った 猫にやさしい動物病院

最近は「犬の鳴き声が怖い!」「他の動物のにおいが苦手」といった「猫の意見」を重視して、猫にさまざまな配慮を施した動物病院が増えている。今回ご紹介する「ほさか動物病院」(神奈川県相模原市)も、そんな病院のひとつだ。

場所は各線橋本駅からバスで10分ほどの国道沿いで、ペパーミントブルーで縁取られた「Hosaka Animal Hospital」の看板が目印。1階は猫以外の動物専用フロアで、猫の診察室は、玄関入って右手の階段を上がった2階のフロア。階段入口の「猫診察室」の看板と、空を見上げた黒猫のシールがなんとも愛らしい。

猫診察室に上がる階段。「空を見上げる猫」が目印

猫診察室に上がる階段。「空を見上げる猫」が目印

2階に上がるとぐっと静かになり、出迎えてくれた保坂敏(さとし)先生に案内されながら診察室の奥に進むと、入院室と猫専用のVIPルームが並んである。VIPルームは主にホテルとして利用されるそうだが、この日、撮影の控室(?)として利用していたのは、病院猫のナミちゃん(♂)とトラちゃん(♂)。

「ナミは知らない人でも大丈夫ですが、トラはちょっと臆病かも」という保坂先生の話のとおり「あんたたち、誰なんだニャン?」と、興味津々に何度も扉から出ようとするナミちゃんと、それとは対照的にトラちゃんは、一番高いコーナースペースで香箱スタイルのまま動かない。

VIPルームで撮影待機中(?)のトラちゃん(上)とナミちゃん

VIPルームで撮影待機中(?)のトラちゃん(上)とナミちゃん

トラちゃんは交通事故で大けがをし、ほさか動物病院で治療を受け、わけあってそのまま病院で暮らすことになった。病院猫は、ナミちゃんとトラちゃんだが、今日は特別に、保坂先生が自宅で飼っているメインクーンのレオちゃん(♂)も顔を見せてくれた。

循環器や整形外科疾患では、他院から紹介されて来る動物も多い

循環器や整形外科疾患では、他院から紹介されて来る動物も多い

「猫の可愛さは、呼ぶと目を細めて『なあに?』と返事をしてくれるところ。気まぐれでマイペースで、こちらが呼んでも来ないかと思ったら、足元にすり寄ってきて、ゴロゴロのどを鳴らしたり……。そんなところが魅力ですね」。

猫はつらい症状を隠す動物 病気の兆候を見逃さないで

“父、祖父、叔父も獣医師”という環境で育った保坂先生は「父も叔父も開業医ではありませんでしたが『動物を診療する仕事』というのは私にとって身近で、将来、獣医師になることは自然な流れでした。ちなみに祖父は、戦時中、軍馬を診る獣医師だったと聞いています」と話す。

大学院を卒業した保坂先生は、勤務医、大学病院の研修獣医師などを経て、平成5年、相模原市に開業。のちに今の場所に移転して、平成20年の建て替え時に、少しでも猫にストレスのかからない環境で、安心して治療を受けてもらいたいと、猫と犬の診察室を分けた。

「本当は猫専門病院を作りたかったのですが、今のスタイルになりました」と話す保坂先生だが、その後、機会があり、猫専門の「さがみはらねこの病院」を開院し、現在、ほさか動物病院の分院として、ともに地域の猫診療の中心を担っている。

循環器、整形外科など専門性の高い医療を提供している保坂先生

循環器、整形外科など専門性の高い医療を提供している保坂先生

ところで、ほさか動物病院のホームページを見ると「循環器科」という言葉が目に入るが、保坂先生は、心臓疾患などを診る循環器の認定医でもある。

「大学時代から循環器に関連した研究室に所属していたこともあり、母校の麻布大学附属動物病院の循環器科で5年間研修し、獣医循環器認定医を取得しました。循環器系の病気は犬のほうが多いのですが、猫にもあります。代表的なのが『心筋症』(心臓の筋肉に異常をきたし、心臓が正常に機能しなくなった状態)という病気で、主に『肥大型心筋症』『拘束型心筋症』『拡張型心筋症』の3つがあります。

最も多いのが『肥大型心筋症』で、心臓の筋肉が分厚く肥大することで左心室が狭くなり、体内に十分な血液が送られなくなってしまいます。猫の場合、初期に目立った症状はありませんが、元気がなくうずくまっていることが多くなり、進行するとハアハアと速く苦しそうな呼吸が見られます。

また血管の中にかさぶたのような血栓ができることがあり、これにより動脈が詰まると足が麻痺して動かなくなることもあります。肥大型心筋症は、日本猫にも見られますが、メインクーンやラグドールなど、大型の洋猫に多く発症します」

猫の気持ちを安定させるホルモン製品「フェリウェイ」も完備

猫の気持ちを安定させるホルモン製品「フェリウェイ」も完備

肥大型心筋症を根本的に治すことはできないが、早期発見・定期検査により病態を把握することが重要で、症状が出なければ予後は良好だ。

「この病気は平均5、6歳で診断されることが多く、猫が食事もせずうずくまってばかりいたり、いつもより呼吸が速いと感じるときは、早めにかかりつけ医に相談したほうがよいでしょう」

ちなみに猫の正常な安静時呼吸数は1分間に30回未満。猫が寝ているときに、胸やおなかが上下に動く回数を数え、正常より多いようなら一度受診してみるとよい。

「猫は、つらい症状があってもがまんしてしまう性質があり、飼い主さんが『この頃元気がないな』と思っているうちに病気が進行してしまうことも少なくありません。病気の治療に大事なことは早期発見です。そのために大切なのは、日ごろの観察と健康診断です。中でも加齢に伴い増えてくる慢性腎臓病は、早い段階で発見して療法食に切り替えたり、投薬により病気の進行を抑えることができます。当院では、年に一度のワクチン接種や誕生日健診などの機会に、腎臓病の兆候が早期にわかる尿検査や血液検査(SDMA)を推奨し、腎臓病の早期発見に努めています」

また現在、大学病院で整形外科の研修医をしている保坂先生によると、犬ほど骨や関節の問題は少ないものの「猫も高齢になると、若い頃ほど爪とぎをしなくなりますが、中には加齢による関節炎で、足が痛くて爪とぎをしなくなる子もいます。すると分厚く肥厚した爪が伸びて肉球に食い込み、化膿することもあります。シニア猫の飼い主さんは定期的に爪をチェックして、まめに爪を切るケアも大切です。爪切りが難しい場合は、動物病院で切ってもらってもいいですね」。

子猫の頃に積極的に受診して動物病院に慣らすことが大事

猫の健康管理や病気の早期発見には、やはりかかりつけの動物病院との連携が大切だが、猫は動物病院がストレスになることも多い。「嫌がるからかわいそう……」と受診を躊躇しているとますます病院が苦手になり、必要なときに最善な治療が受けにくくなる。

ほさか動物病院のスタッフ。写真奥左は副院長の妹尾先生

ほさか動物病院のスタッフ。写真奥左は副院長の妹尾先生

「大切なことは、猫に病院に慣れてもらうこと。そのためには生後半年までにキャリーバッグに入れて、できるだけ動物病院に連れて行くことです。キャリーを出すだけで逃げてしまうのを防ぐために、キャリーバッグを小さい頃から生活空間に出しておくことも必要です。受診の目的は、ワクチン接種、健康診断の他、爪切り、耳掃除、歯磨きなど、セルフケアの指導を受けるだけでもかまいません。猫に『病院は嫌なところではない』と感じさせ、スムーズに受診できることが病気の早期発見・治療のベースです。少しでも猫が長生きして飼い主さんと暮らせるためにも、ぜひ動物病院に慣らしてもらいたいと思います」

ほさか動物病院

ほさか動物病院


神奈川県相模原市緑区二本松4-17-1
TEL 042-771-1112
http://www.hosaka-ah.co.jp
診療時間:9:00~12:00、16:00~19:00(祝日18:00まで)
休診:木曜、日曜午後(木曜は予約診療)

Satoshi Hosaka
1987年、麻布大学大学院修士課程修了。勤務医、麻布大学家畜病院研修医などを経て、1993年「ほさか動物病院」開業。獣医循環器認定医。2014年より麻布大学附属動物病院整形外科研修医。日本獣医循環器学会など所属学会多数。

取材・文 西宮三代 写真 平山法行

内容について報告する