ドイツで最も西にあり、古代ローマ帝国の時代から温泉地として栄えた趣(おもむき)のある古都アーヘンにある猫カフェ「カフェ・ミル」。以前はマーケティング会社に勤めていたというオーナーのミリアム・クリュベルツさんが猫カフェをオープンしたのは、2015年の8月だったとか。
ミリアムさん、バルー君(左)とルビーちゃん
「今も自宅で高齢の猫2匹と暮らしているし、もともと私自身がずっと猫と暮らしてきたこともあって、みんなが笑顔になれるような、〝すべての人にオープンな猫カフェ〟があれば素敵だと思ったの。でも、もちろん猫たちの幸せが最優先よ。接客に疲れたら、猫たちは猫専用ドアを通ってバックヤードで休憩も出来るし、入口も二重ドアになっているので外に飛び出す心配もないの」とミリアムさんは断言する。
毛づくろい中のミロ君(前)と熟睡中のルビーちゃん
夢を実現するため、必死に店舗開店のための複雑な手続きをこなし、猫たちが高い場所から安心して人間を眺められるよう手製のキャットウォークを作り、人間の鑑賞にも堪えるオシャレなアンティーク家具を集め、ウィーンの猫カフェの見学にも行って着々と準備を進めたとのこと。
彼女が一番こだわったポイントは、可愛くて優秀な猫店員を集めること。「私がアーヘンのティアハイム(民間の動物保護施設)に実際に足を運んで猫店員のインタビューをしたのよ。カフェにいることが猫たちの負担になってはいけないから、人前に出ることが嫌いじゃなくて、人なつこくて、穏やかで性格のいい猫たちを探したの。もちろん4匹の猫店員たちは決して人を引っかいたり、噛んだりしないのよ」と誇らしげだ。
王子様の風格のあるクリック君
店内では紅一点の茶トラのルビーちゃん(3歳♀)、白黒のクリック君(3歳♂)、シャムのミロ君(2歳♂)、メインクーンとラグドールのミックスの白黒長毛種のバルー君(2歳♂)がそれぞれお気に入りの場所で気ままに過ごしている。中でも一番人好きなバルー君がさっとテーブルへチェックに現れ、ルビーちゃんはキャットウォークでポーズをキメ、ちょっぴりシャイなクリック君は椅子の上で毛づくろいに余念がなく、マイペースなミロ君は高い場所でお昼寝中。
「ここの猫たちは人に傷つけられたことがないから人が大好きなの。中でも一番甘えん坊のバルーは今、お客様の膝の上に乗る練習中なのよ。女の子はルビーだけなんだけれど、実際彼女がここのボスなのよね」とミリアムさんは笑う。
猫カフェの内装もすべてハンドメイド
ヴィーガン(絶対菜食主義)のミリアムさんが提供するカフェのメニューはすべてヴィーガン&ベジタリアン専用メニュー。フェアトレードコーヒーを使い、驚くほど美味しいサンドウィッチやサラダやケーキなども味わえる。オシャレでヘルシーな猫カフェには、ドイツ各地はもとよりヨーロッパ全土、オーストラリア、カナダ、ニカラグア、中国などから世界中の人々が集まって来るという。
野菜たっぷりのフムス入りサンドウィッチ
静かに本を読みたい人、子連れの親子、おじいさんやおばあさん、ビジネスパーソンに若いカップルなどが一堂に会し、猫の話題で盛り上がるのもうなずける。外にはテラス席もあって、窓辺で寝そべる猫たちの姿を眺めながら一息つくのもいい。「たくさんの人が毎日お店の前を通って、猫たちを眺めては笑顔になるのを見ているのが幸せ。それに初デートが猫カフェなんて素敵じゃない?」と茶目っ気たっぷりに語るミリアムさんと、4匹の猫店員たちが待つ古都アーヘンに、ぜひ一度足を伸ばして欲しい。
Cafe Milou
Alexanderstrase 55 D-52062 Aachen
TEL +49 241 99033650
営業時間/11:00~19:00
定休日/月曜
http://www.katzencafe-aachen.de
(写真・文 平野敦子)
Atsuko Hirano
猫&映画専門フリーライター。著書に『新版 人に育てられたシロクマ・ピース』『ふたつの名前で愛された犬』(学研パブリッシング)。現在猫2匹と同居中。国内外を飛び回り、猫や猫好きの人々と交流する旅を続けている。