【獣医師監修】柴犬は飼いやすい?性格や平均寿命、かかりやすい病気、抜け毛対策は?
世界で大人気になっている、柴犬。愛らしさと凛々しさが同居していて、飼い主さん一途。そんな柴犬の魅力にとことん迫りつつ、一緒に楽しく暮らし、愛柴に健康でいてもらうためのお役立ち情報もお伝えします。
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柴犬の祖先は紀元前から存在!?
日本犬の祖先は、紀元前から日本各地にいたと考えられています。
今では絶滅したものも含めて、地名を冠した“地犬”と呼ばれる土着の犬は、一説によると20犬種以上いたとか。
柴犬は、アナグマ、ウサギ、タヌキなどの猟に携わった小型の日本犬。
柴犬と呼び始めたのは、日本犬保存会の創始者である齊藤弘吉氏で、それまで島根(石見)では石州犬、加賀の国では加州犬、富山県では立山犬、石川犬では白山犬などと呼ばれていました。
柴犬は、1936(昭和11)年に日本の天然記念物に指定されました。
全6犬種の天然記念物のうち、柴犬は唯一の小型犬です。
ちなみに、日本犬保存会やジャパンケネルクラブ(JKC)では、豆柴という犬種は認めていません。
豆柴とは、柴犬の中でも特に小さいサイズの犬の呼び名と言えますが、犬種の標準的なサイズより小さい犬同士の交配を繰り返したり、大きくならないようにご飯を少なめにするといったことは、犬種の健全性という面からは好ましいとは言えないかもしれません。
柴犬の性格と特徴
柴犬はコンパクトながらも、日本古来の猟犬ならでは性格を備えています。
勇敢で、服従心が強く、独立心があります。
もとは屋外飼育や半屋外での生活だったため、人とべったり一緒にいるというより、ある程度のパーソナルスペースも必要で、体を拘束されることが苦手。
警戒心が少し高めですが、それほど吠える犬種ではありません。
そんな柴犬の性格を尊重したうえで、しつけやトレーニングを行うのが、柴犬と上手に暮らす秘訣です。
柴犬の主な毛色は、赤毛、黒毛、胡麻毛の3種類です。胡麻とは、赤に黒っぽい色が混じり合った毛色。
すべての毛色に、裏白と呼ばれる白色が入ります。
近年ペットタイプとして人気がある白毛は、山間部の猟で目立たない毛色が理想とされた柴犬においては本来の姿ではないとされていて、日本犬保存会の展覧会には出陳されません。
成長するにつれて、クリーム色や赤色に近くなったり、耳や尾などに赤毛が混じったりすることもあり、完全に真っ白の柴犬は少ないでしょう。
日本犬保存会の解説によると、オスはオスらしく、メスはメスらしくという特徴である性微感が外観に表れているそうです。
オスは外へ向かう気持ちが強く、メスは家族の気持ちを敏感にくみ取りやさしい気持ちを持っているとか。
理想的なサイズは、体高がオス39.5cm、メス36.5cm。
理想体重はとくに定められてはいませんが、10kg前後の柴犬が平均的です。
柴犬の平均寿命は?
柴犬は長生き犬種として知られています。
15歳を超えるご長寿柴犬の元気な生活ぶりを、インスタグラムなどで目にすることもめずらしくありません。
小型犬の平均寿命は14歳あまりと言われていますが、柴犬の場合は13~16歳が平均的な寿命で、20歳を超える柴犬もいます。
柴犬は老犬になると認知症になる確率がほかの犬種より高いので、なるべくシニアになっても、散歩や遊びなどでの脳トレを心がけておきたいものです。
柴犬のかかりやすい病気は?
柴犬は小型犬に多い、膝蓋骨脱臼(パテラ)にかかる可能性があります。
パテラの発症には遺伝的な要因が関係しているとも考えられていますが、滑る床での生活や高いところからのジャンプなどを控えて、なるべく発症させないように、あるいは発症してしまっても重症化しないように心がけてください。
柴犬は、皮膚疾患が発生しやすい犬種のひとつ。食物アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、膿皮症などにとくに注意が必要です。
愛犬が痒がっている、うんちがゆるい、皮膚に赤いブツブツができているといった様子が見られたら、獣医師に相談を。1歳未満から発症する皮膚疾患は、早期に原因を特定し、治療を開始することが重要です。
老犬になると、前庭疾患や高齢性認知機能不全(認知症)にかかる柴犬が出てきます。
前庭疾患にかかると、首や体を斜めに向け、まっすぐ正常に歩けなくなるのが特徴。
転倒や誤嚥性肺炎など危険な状態に愛犬を陥らせないよう、必ず、獣医師からの指示と投薬を受けましょう。
認知症になると、昼は寝るのに夜は起きてしまうようになることも。
なるべく昼は、足腰が弱っているのであればカートに乗せてでもいいので、日光浴や散歩に出かけるのが対策法のひとつです。
それでも夜鳴きなどが収まらない場合は、獣医師に相談の上、薬物療法やサプリメントの投与を行うことも可能です。
快適な柴犬ライフのヒント!(飼い方)
柴犬はもともとは生粋の猟犬で、少し警戒心が高めなところがあるので、適切な社会化とトレーニングが必要です。
子犬期に犬の幼稚園に通うなどして社会性を身に着ければ、一緒に旅行に行っても、フレンドリーな柴犬として安心してほかの人や犬に接することができるでしょう。
好奇心が旺盛な柴犬との旅行では、車の中で動き回らないようにケージ(クレート)に入れておけば安心です。
子犬の頃から、クレート内で給餌するなどして、クレートに慣れさせましょう。
旅先では、抜け毛対策に洋服を着させれば、布団などに抜け毛を残さずスマートに温泉旅館などにも滞在できるかと思います。
洋服慣れも、子犬期からぜひ行って下さい。
人間の赤ちゃんに、飼い主さんの愛情や、自分のパーソナルスペースやお気に入りグッズを奪われそうになると攻撃性を見せることもあります。
所有欲が高いと感じる柴犬と暮らしている場合は、早めにドッグトレーナーなどに相談するのをおすすめします。
春と秋に訪れる換毛期の抜け毛が多いのは、柴犬の宿命。抜け毛対策には、1日2回のブラッシングがベストです。
スリッカーブラシとコームを使って、死毛を取り除き、毛の生え変わりを促進してあげましょう。
高い運動欲求を満たすために、朝晩それぞれ最低でも30分以上は散歩してあげるのも大切です。
引っ張り癖のある柴犬には、呼吸器に負担をかけないように首輪ではなくハーネスを使用したほうがベター。
柴犬の価格相場は?
柴犬の価格の相場は10~40万円。
メスのほうが、一般的にはオスよりも高額です。
人気犬種なので、親犬の健康管理もままならず乱繁殖をされている可能性もあります。
なるべく、健康な親犬から生まれていることが確認できるようなブリーダーさんやペットショップから迎えたいものです。
柴犬のまとめ
日本の天然記念物で、日本犬の中では唯一の小型犬である、柴犬。
サイズは小さくても、洋犬の愛玩犬種とは違う気質や特徴を知り、柴犬らしさを受け入れれば、きっと楽しい柴犬ライフを送れることでしょう。
監修者情報
箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科
ライタープロフィール
臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。
コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally