【Shi-Ba】見よ! これが我が家のジョーシキ & ヒジョーシキ(その1)
犬飼いさんたちのフツウとは一体…… 普段やっているソレ、本当に世間的にジョーシキなのだろうか? 実はヒジョーシキだったり、変わったことなのかも……本特集でいろいろな例を見て、共感したり新たな発見をしてみて!(Shi-Ba 2019年5月号 Vol.106より)
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取材協力
東京都 溝口ガム(メス・1歳)
元気いっぱいで、オモチャを与えるとすぐ壊してしまうが、空気も読める。「外で友達犬と遊んでいても、小さい犬にも優しいです」と奥様の彩英子さんは、誇らしげに語る。
東京都 河本レン(オス・3歳)
事情により飼えなくなった前の飼い主さんから譲り受けた。まだ河本家に来て間もないが、家族との関係は良好。奥様の幸江さんは「徐々に心を開くようになって嬉しい」という。
神奈川県 伊藤まる(オス・1歳)
一日100回は、まるのことを「かわいい」と言う伊藤家。父の正一さん、母の順子さん、長男の稜真さんが、取材に協力してくれたが、全員から「まる大好き!」というオーラが……!
千葉県 山守もなか(メス・3歳)あんこ(メス・2歳)
もなかもあんこも、すごく人懐っこい。もなかは、何か悟ってるんじゃないかと思うくらい、穏やかな目をしている。2匹とも換毛期は毛がたくさん抜けるので、掃除が大変。
特集内定義
【ジョーシキ】とは?
少数派だと自覚しつつも普段の生活でよく愛犬にやっていることを、本特集ではジョーシキと呼ぶ。どんなことをみんなやっているのだろう。
【ヒジョーシキ】とは?
非常識とは「常識から外れていること」だが、本特集では家族の数人がすること、たまにやること、意識的にやらないことをヒジョーシキと呼ぶ。
みんな違ってみんないい? ジョーシキとは、なんなのだろうか
「このヒジョーシキものが!」と叱られた経験、みなさんはあるだろうか? 特に学生が社会人になったら、こういうことはよく起こる。
本特集ライターも、ビジネスメールに絵文字を入れたりして、よく雷を落とされた。当時は叱られる度に「ジョーシキって難しいな」と思った。
何が言いたいかというと、自分ではジョーシキだと思っていることも、他人にはヒジョーシキな場合もあるということ。それは犬の飼い方、接し方にも当てはまるんじゃないか。現に、本誌スタッフにも“ちょっと変わったこと”を取材中にしていたりする人たちがいる(詳しくは追ってご紹介)。
いろいろなお宅を取材すれば面白そうだ。愛犬を讃える歌を千曲自作したとか、一つコマンドを覚えたらお祝いのケーキを焼くとか、というのはさすがにないかもしれないが、それに近いものはあるような気がしないでもない。
とういうことで、読者のジョーシキ、ヒジョーシキを、探ってゆく。
猫じゃらしに注目!
友紀さん「こっち向いて!」
もなか「母ちゃん何やってんの?」
あんこ「見ない方がいいよ」
まず最初に紹介したいのは、こちらの写真。もなかとあんこの飼い主、友紀さんは愛犬の写真を撮るのが好き。2匹の隣に鎮座する、柴犬グッズの量にも驚かされる。だが、もっと面白いのは、カメラ目線をもらうために、自分の髪に猫じゃらしを挟み、愛犬の注意を引いていることだ。「え! これって変ですか?」と友紀さん。でもこれ、かなり使えるテクかも! ?
かわいく撮ってね
我が家の【ジョーシキ】コミュニケーション編
人間同士でも、関係性や人によってもコミュニケーション方法は違う。何か面白いジョーシキが発見できそうだ。
走って、話して、絡まって……十犬十色のコミュニケーション術
例えば夫婦に「相方とどうやってコミュニケーションとるの?」と質問すると、いろいろな答えが返ってくるはずだ。
一緒にゲームをする、話す、はたまたランニングする、筋トレするなんて人もいる。このことからも面白いコミュケーション方法が聞けそう。
オモチャで心ゆくまで遊んであげる
ぬいぐるみをすぐに破壊してしまうガムのために、裁縫道具を常備。壊すたびに縫うのも、ジョーシキ。
「自慢げー」
はあ、またかー
「ガムに話しかけることですね」と彩英子さんはいう。仕事で疲れた日は、一緒にテレビを見るのが至上の喜び。人と話すかのように世間話をする。理解しているのかは謎だが、ガムも嬉しいのだろう。何しろ犬は、人とコミュニケーションを取るのが大好きな動物なのだ。
犬の写真を見ながら会話をする
亡くなった先住犬のケンシロウと、レンの写真で埋め尽くされた河本家のタンス。コップにも写真が!
「写真いっぱい」
これだれ?
伊藤家のコミュニケーション方法は、家族みんなで一緒にダッシュすることだ。
外で遊ぶのが好きだというまるのために取材中に公園を訪れると、まるが急に走り始めた。すると、ご家族もそろって猛スピードでダッシュ。突然の出来事に呆気にとられる取材班をよそに、伊藤家はみんな楽しそうに、公園を何度も往復する。
休憩はあつーい抱擁スタイルで
幸江さんの膝の上が大好きなレン。優しく、愛溢れる抱擁をしてあげるのが、河本家のジョーシキ。
「安心する~」
愛情表現はだいたい過剰
伊藤家の面々は、これでもかというくらい、まるを強く抱きしめる。愛って動きづらい!?
稜真さん「スキー!」
まる「「アリガトー……」
うへへー
コラム① 編集部の犬愛【ジョーシキ】
ヒジョーシキといえばシーバ編集部。
編集長Uに「自分の行動でヒジョーシキだと思うことあるっすか?」と聞くと「撮影で読者さんのお宅へ伺うじゃないですか。そこで犬が寝転べば、初めて会う飼い主さんの前でもすぐに寝転んじゃうんですよね。『ここから撮るとかわいい!』と撮影ポイントをチェックしてるだけなんですが……」と即答。撮影中にUの奇行を発見しても、そういうことなんで許してあげてください。
我が家の【ジョーシキ】散歩編
毎日のようにやること、それが散歩。それゆえに、犬や飼い主の個性が表れやすいシチュエーションでもある。どんなジョーシキがあるのだろうか?
うんこを追いかけたり、一日中歩く愛犬を喜ばせるための努力
幸江さんはレンの散歩中、ひと時も油断ができない。なぜなら、レンはなんの前触れもなく、うんこをすることがあるから。
「普通は排便する前に、においを嗅いだりくるくる回ったりするのに……!」そのため幸江さんは散歩中、うんこ取りグッズを常に手に持ち、踏ん張りそうなそぶりを見せると、ダッシュして近寄り、うんこをキャッチしようと試みる。その見事な攻防を繰り返すうちに、いつのまにか追いかけっこの遊びに発展する。それが散歩中のジョーシキとなった。
他犬がいると、遊んでアピール
散歩中に犬を見つけると、凝視。2匹仲良く寄り添っているのが、面白い。「ん? あれは友達かな?」って感じか。
あんこ「一緒に遊びたい」
もなか「遊びたいねえ」
ルーティンが好き! 休憩スポットはここ!
ここに来ると、オスワリをすることが多いガム。柴犬はルーティーンにこだわる犬種。こういったスポットがいくつかある。
「休憩サイコー」
疲れたら頭をなでなで これ、散歩中の鉄板
休憩している時は、ガムの頭を撫でてあげるのが、溝口家のジョーシキ。あー、気持ちー。
「そこそこ!」
一方、伊藤家でのジョーシキは、長時間散歩に出かけること。一般の家庭では長くても朝夕1時間ずつくらいだろう。しかし、伊藤家では、週末は2時間×3セット、なんと計6時間も散歩するのだそう。まるで強豪サッカー部の練習量並みだ。「おかげで、休みの日なのに、ほとんど家にいないんですよ。でもまあ楽しいからやってるんですけど。まるも喜んでくれるし」と屈託なく笑うご夫婦。
散歩時間は6時間ごえ!
元気なご夫婦といえど、さすがにこれだけ歩くと疲れるわな。ピンピンのまると、よろよろ歩くご夫婦の対比が面白い。
正一さん「疲れた!」
順子さん「ゼーゼー」
3人がかりで足拭きタイム
散歩後の足拭きを嫌がるまるのために、3人がかりで優しくやってあげるのが伊藤家のジョーシキだ。手がかかるほど、かわいいもの。
「おとなしくしててねー」
足拭きが嫌いなので、散歩の後は、床そうじ
散歩後に足を拭かれるのが嫌いなガム。床が汚れたら、その度に床を拭く優しい彩英子さん。
「いつもサンキュー」
我が家の【ジョーシキ】食事編
好きなものも嫌いなものも、犬によって違う。おまけに、飼い主の考え方も、もろに出る食事。それゆえに、ジョーシキのバリエーションが豊か。
食事のジョーシキも様々だ。山守家の食事のジョーシキ風景。それは、猫と犬の触れ合いだ。山守家のボスは、猫のひろし。犬たちよりも前から山守家にいるので、みんなに一目置かれている。山守家にいる猫2匹と犬2匹は基本的に仲良しで、窓辺でお尻をくっけて、日向ぼっこをすることもある。味の好みも似ているのだろうか? あの話題のオヤツもみんなで仲良く食べるのが、山守家ではフツー。猫と犬が一緒に食事をする絵はあまり見たことがない。これは両者の穏やかな性格があってこそ。
猫も犬も一緒に仲良くナメナメ
同居猫ともなか & あんこが、仲良くオヤツ。取り合いや、ケンカにならないというから、本当にすごい。
「ぼくらみんな仲良しさー」
米派なので大盛りの白米を茶碗で食します
茶碗に盛られた大好きな白米を覗き込むガム。これがサイコーにおいしいのだ。
「うまそー」
食事ついでに伊藤家の食卓ものぞいてみよう。まるは、なんと飼い主さんの手からフードを食べるのが好き。抱っこされ、甘えながら、正一さんが口元まで運ぶのは、伊藤家でよくある風景。その姿は、まるで赤ちゃんのようで、かわいすぎる。
「ちょっと面倒だけど、僕らにとっては遊びみたいなものかも。だって楽しいんですもん」
食事は手から食べるのがジョーシキです
まるにとって、たまらない時間。大好きな家族に抱っこされ、なおかつフードを食べられるから。
「皿からじゃ食べないよ」
あー極楽
我が家の【ジョーシキ】遊び編
ボール投げが好きだったり、走るのが好きだったり、遊び方のジョーシキも家によってそれぞれある。なかなかマニアックなものもあったぞ!
いつのまにかうんこを取る遊びに発展!?
うんこをキャッチしようと追いかけていると、レンは遊んでくれていると勘違いして、追いかけっこに発展することがよくある。
幸江さん「待て待てー」
レン「楽しー」
ボールで遊んでいる子供に大喜び!
ボールと子供が大好きなレン。公園で遊んでいる人を発見すると、走り出す。
「こっちにもパス!」
地面に体を擦りつける!
もなかは公園に行くと、必ず地面に体を擦りつける。楽しいのだろうか、気持ちいのだろうか。
おならだって明るい家族は遊びに変える
まるがオナラをすると、くさーいとオーバーリアクション。みんなで大笑い。なんでも遊びに変えるのが、伊藤家のジョーシキ。
順子さん「くっさー」
まる「いいにおいでしょ?」
愛ゆえに……不思議な【ジョーシキ】
山守友紀さんは、もなかのひげが抜けたら、柴犬型の小さなぬいぐるみの口周辺につけて、髭にしている。愛おしいもなかのものは再利用して、いつまでも残しておくのが友紀さんのジョーシキなのだ。愛情に溢れている。
フンフン
コラム② Youたちに聞いたタイの犬の【ジョーシキ】
日本に住む外国人たちに、自国のジョーシキを聞いてみた。
いろいろな国の人に聞いたが、面白かったのはタイ人のガン君。「僕はバンコク出身なんだけど、そのへんにいる野良犬を、かわいがってた。
飼い主は地域の人みんな。気が向いた人がゴハンをあげたり、みんなでなんとなく世話をするのがジョーシキだったなあ」日本に来て驚いたのは、野良犬が少ないことと、どの犬も飼い主がはっきりしていることだったそう。所変われば、犬の飼い方は変わるのだ。
我が家の【ヒジョーシキ】食事編
食事のヒジョーシキは、だいたい犬にとって嬉しいことの方が多いかも。普段もらえないものをもらったり。そんなヒジョーシキもっと増えるといいなあ(柴犬談)。
イレギュラーを楽しめればヒジョーシキも悪くなさそうだ
「たまにですが、すごい太い骨をあげるんですよ」と、彩英子さんが冷凍庫から出してくれたものに、取材班は驚いた。長さ20cmはあろう動物の足のスモークだったから。
「豚の足です。知り合いから、たまにもらうんですよ」
ヒヅメまでしっかり残っている、ごつい豚足。冷凍保存しているものだが、ガムはそれでも動物のにおいを嗅ぎとれるのだろう。他の骨を与えるよりも、野生の目に変わり、すごい勢いで食べていた。たまに現れる極上の味。「今日は撮影だから特別」と彩英子さん。
たまにもらえる極太の骨にテンションUP
たまにもらえる、豚の足。これは犬にとってなかなかのご馳走だということは、ガムのがっつき方を見ればよくわかる。大興奮だった。
「これ! やばい!」
普段は怒られるのに今日はパンを食べられる?
普段は食べられないパン。でも、今日は舐めても叱られなかったあんこ。もしかしたら、ヒジョーシキがジョーシキに変わる? もなかはうらやましそうな表情で見つめ続ける。
あんこ「いえーい」
もなか「いいなあ」
甘いお菓子はあげないようにしています
まるにもっと好かれたいからあげたいのだけど、糖分の取りすぎは体に良くない。ということで、ぐっと我慢する正一さん。
正一さん「あげたんですけど」
まる「じゃあちょうだい」
コラム③ 昔と今は大間違い? 移りゆく【ジョーシキ】
柴犬の外飼いが主流だった20~30年前までは、犬の足を拭いたり爪を切ったり、マッサージをしたり、オヤツを頻繁にあげたり、一緒に寝たりってのはあまりしなかったことだが、今では割とフツー。柴犬に服を着せるってのも、昔はなかったなあ。
外飼い犬も飼い主と触れ合う時間がかなり増えている印象。犬と人間の距離が、かなり近づいた気がする。これから先、犬と人間の関係にどんな変化が生まれるのか、それも楽しみだ。
Text:Daizo Okauchi
Photos:Masayuki Satoh、Minako Okuyama、
Teruhisa Tajiri