【獣医師監修】犬のおしりから血が出ている。肛門嚢炎の症状・原因・治療法・予防法
切り傷や擦り傷による多少の出血は、人間であれば大事になることは少ないですが、犬の場合は事情が異なります。ちょっとした出血でもすぐに対処しなければいけない場合も…。今回は、犬がおしりから出血している場合について解説します。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
犬の肛門嚢炎とは?
犬がおしりから出血している場合、疑われるのは肛門嚢炎(こうもんのうえん)という病気です。この病気は、肛門の近くにある肛門嚢が炎症を起こしているものです。
犬の肛門の周囲には、肛門腺という分泌器官があります。その肛門腺で作られた分泌液は肛門嚢に貯蓄され、排便する時にマーキングのためのニオイをつけることに使われます。また、犬同士でおしりをかぎ合うことがありますが、これは肛門腺で作られた分泌液のニオイをかいでいるのだといわれています。この肛門腺は、アポクリン腺と皮脂腺からできていて、分泌液の色や粘度は犬により異なります。
肛門嚢炎は、分泌液が何かしらの理由で排出されなくなってしまうことから引き起こされます。そして溜まってしまった分泌液の中で細菌が繁殖すると、その細菌を取り除くために炎症が起こってしまいます。この状態が肛門嚢炎で、そのまま放置すると膿がどんどん溜まっていき、こぶのように膨らんだ膿瘍(のうよう)ができることがあります。この膿瘍は破裂したり、腫瘍になることがあるので注意が必要です。
肛門嚢炎は、ストレスや高齢化、肥満などにより肛門嚢に分泌液が溜まりやすくなることが原因といわれています。また、体調を崩し軟便や下痢が続いてしまうと、犬の肛門の周りが不衛生になってしまうので細菌が感染しやすくなります。肛門嚢炎は分泌液の細菌が引き金になるので、おしりの周囲の不衛生な状態も発症のリスクになります。
犬の肛門嚢炎の治療方法
この肛門嚢炎は、以下のような方法で治療します。
肛門腺絞り
分泌液が溜まってしまった時は、肛門嚢を両脇から指で押して分泌液の排出を促します。これを肛門腺絞りと呼び、分泌液が溜まらないように、定期的なケアが必要です。
投薬治療
抗生物質を投与することで、繁殖した細菌を除去します。局所療法を行う時は、カテーテルを使って肛門嚢内に直接投薬することもあります。
外科手術
投薬治療の効果がない場合は、肛門嚢を手術で切除することもあります。この手術には、「閉鎖式切除術」という嚢と肛門をつなぐ管を残して肛門嚢だけを切除する方法や、「開放式切除術」という管も肛門嚢もすべて切除する方法などがありますが、いずれの方法もメリット・デメリットがあるので、獣医師と相談して決めましょう。
肛門嚢炎の予防方法
では、犬の肛門嚢炎を予防するためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
すぐにできる予防方法は、定期的な肛門腺絞りです。肛門嚢に溜まった分泌物を、飼い主が排出させることで、肛門嚢炎を予防します。肛門腺絞りは慣れるまでが大変なので、最初はトリミングサロンや動物病院でやり方を教えてもらった方がよいでしょう。
自宅で肛門腺絞りを行う際は、犬の肛門の斜め下についている肛門嚢を、肛門に向かって斜め上に押し上げます。この時、時計でいう4時と8時の方向を同時に押し上げ、排出された分泌物をティッシュやタオルなどで拭い取ります。分泌物が溜まる速度は犬によって違うので、定期的なチェックが重要です。
肛門嚢炎は、犬の排便にも影響を与える厄介な病気です。この病気を患うことで、犬がストレスを抱えてほかの病気を発症してしまうこともあるので、犬のおしりから血が出ているのを見つけたら、すぐに動物病院で診てもらうようにしましょう。
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