【獣医師監修】犬の膣炎 考えられる原因や症状、治療法と予防法
犬の膣炎(ちつえん)は、メス犬特有の病気です。子宮と外陰部をつなぐ膣が炎症を起こす病気で、外陰部が赤く腫れたり、化膿したおりものが出るといった症状が出ます。命に関わることはありませんが、避妊済みのメス犬も患うことがあるので注意が必要です。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
犬が膣炎になる原因
犬が膣炎を発症する原因としては、以下のようなものがあります。
発情期を迎える前のメス犬が発症する場合
発情期前の膣炎は、そのほとんどが先天的な生殖器の奇形により、膣がおしっこや便に汚染されることで起こります。異所性尿管(尿管が尿道や膣に向かって開いている状態)や、膣の奇形が原因として挙げられます。膣の奇形には、円形狭窄(膣の内部が巾着袋の取り出し口のようにすぼまっている状態)や、帯状狭窄(膣弁が垂直になっている状態)、膣腔狭窄(膣の内部全体が狭い状態)などがあります。
発情期を迎えた後や避妊手術後のメス犬が発症する場合
避妊手術をすると、腫瘍の発生率・再発率を下げることはできますが、膣炎になる可能性がなくなるわけではありません。発情を迎えた後や避妊手術後のメス犬が膣炎になる原因としては、ヘルペスなどのウイルス、パスツレラ・レンサ球菌・大腸菌・マイコプラズマ・クラミジア・ブルセラカニスなどの細菌、可移植性性器肉腫・平滑筋腫のような腫瘍などがあります。
犬の膣炎の症状
犬が膣炎になると、膣の腫れや痒みにより犬が陰部を気にするようになります。膣口(外陰部)が赤く腫れ、犬は外陰部をしきりに舐めたり、地面にこすりつけたりして、痒みや痛みを軽減したりしようとします。また、化膿したおりものが出て悪臭を放つなどの症状が現れます。
この膣炎は、仔犬の場合は自然治癒することもある病気で、早期に治療すれば命に関わることはありません。また、炎症が悪化しない限りは全身症状も現れません。
犬の膣炎の治療法
では、犬が膣炎を発症した時はどのように治療するのでしょうか。
発情期を迎える前のメス犬が発症した場合
先天的な生殖器の奇形が膣炎を引き起こしている場合は、外科手術を施します。会陰切開術という、犬の肛門から外性器の間にメスを入れて狭窄部位を修復したり、尿道乳頭を露出させることで、膣の状態を正常にします。
発情期を迎えた後や避妊手術後のメス犬が発症した場合
ウイルスや細菌などが原因で膣炎を発症した場合は、抗生物質や抗菌薬を投与すると同時に膣洗浄を行います。また、避妊手術前で細菌の感染が重度であったり腫瘍ができている場合には、犬を隔離し、卵巣・子宮を摘出することもあります。
犬の膣炎の予防法
犬の膣炎には、明確な予防法はありません。しかしながら、避妊手術を行うことで膣炎になるリスクを軽減することはできます(あくまでリスクを軽減することができるのであって、避妊手術後にも膣炎になる可能性はあります)。避妊手術を行うことで、膣炎以外の生殖器の病気の予防にもつながるので、妊娠させる予定がない場合は、早期の避妊手術がおすすめです。
また、犬の生活環境を常に清潔に保つことも予防につながります。生殖器はデリケートな場所なので、不潔な状態が続くと炎症を起こすリスクが高くなります。とくに、発情期を迎えたメス犬は膣に雑菌が入りやすいので、ケージや寝床の清掃はしっかり行うようにしましょう。
膣炎は自然治癒することもある病気ではありますが、厄介なウイルスが原因となっていたり、子宮の病気を患っている可能性もあるので、念のため動物病院で診てもらった方がよいでしょう。病気の原因を特定すると、その原因に合わせた治療ができるので、早期の完治にもつながります。
メス犬が陰部を気にする様子をみせている時は、早めに動物病院に連れて行きましょう。
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