【獣医師監修】猫の血液型について。 特徴や種類から輸血時の注意まで
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【獣医師監修】猫の血液型について。 特徴や種類から輸血時の注意まで

猫の血液型は何種類あるの? 多い型は何? 血液型検査、血液型と性格の関係、輸血する時の注意などについて紹介します。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

猫の血液型は3種類

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血液型はどう決まるのか

人間の血液型がA型、B型、AB型、O型の4種類あるのに対して、猫はA型、B型、AB型の3種類しかありません。人間の場合は、両親の血液型がA型とB型であればAB型も誕生しますが、猫の血液は「A>AB>B」とA型の遺伝子がもっとも強く、その力関係から子の血液型が決まってきます。よってAB型は「AB型+AB型」と「AB型+B型」の組み合わせからでしか生まれません。それぞれの血液型が決まる組み合わせは次の通りです。

●A型が生まれる組み合わせ
「A型+A型」
「A型+B型」
「A型+AB型」

●AB型が生まれる組み合わせ
「AB型+B型」「AB型+AB型」

●B型が生まれる組み合わせ
「B型+B型」

新生猫溶血現象

そもそもB型の猫は少ないため、純血種の繁殖以外ではまれな事例ですが、B型の猫からA型の仔猫が生まれた場合、仔猫が母猫の初乳を飲むと赤血球が破壊され、死亡することがあります。これはB型がA型に対して強い抗体を持っているためで、「新生猫溶血現象」と呼ばれています。母猫がA型で仔猫がB型の場合は、この現象は起こりません。

血液型の割合

先に紹介したように、生まれる確率がもっとも高いのはA型です。日本でも90%以上の猫がA型だといわれています。次いでAB型、B型の順で、ともに全体の数%しかいないため、極めて珍しい血液型です。ちなみに、B型の割合が比較的高いのがブリティッシュショートヘア、コーニッシュレックス、アビシニアン、ペルシャ、スコティッシュフォールドなどの猫種です。

血液型と性格の関係

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私たち人間の世界では、血液型と性格の関連性を支持する人は少なくありませんが、猫の場合はどうでしょうか。結論からいうと、性格と血液型は関係ありません。猫の血液型は90%以上がA型です。血液型で性格が決まるのであれば、ほとんどの猫が同じような性格ということになってしまいます。猫の性格は、親猫の性格、親猫や兄弟猫との関係、毛色、育った環境、人間との関わりなど、様々な要素から形成されます。これまでに何度か猫を飼ったことのある人や多頭飼いしたことのある人は、猫によってまったく性格が違うことを経験から知っているはず。そういう意味では、飼い主との関係も猫の性格に多少なりとも影響を与えているかもしれません。

輸血時に注意したいこと

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輸血治療の現状

人間の医療では輸血はごく当たり前のことですが、動物医療の分野では血液の確保が壁となって、なかなか難しいのが現状です。輸血医療を行う病院では独自に献血ドナーを募集し、ドナー登録をしてもらうなど、血液の確保に全力を注いでいます。ただし、それも大きな病院に限られ、小規模の個人病院では対応できないことが多いようです。

血液型検査

緊急の手術で輸血が必要な時、血液型がわからないと手遅れになってしまうかもしれません。まったく違う血液を輸血した場合、拒絶反応を起こし、命にかかわることもあります。万が一のことを考えて、愛猫の血液型はあらかじめ調べておいた方がいいでしょう。

血液型は動物病院で検査してくれます。外部検査機関に委託、あるいは血液型簡易測定キットを備えている病院もあるので、それを使えばその場でわかります。病院によって違いますが、価格は5000円~1万円程度です。

交差試験(クロスマッチテスト)

血液型が適合しても、すぐに輸血はできません。輸血する側の猫(ドナー)と輸血される側の猫(レシピエント)の血液を混ぜて、凝集や溶血が起こらないかを調べる交差試験を行う必要があります。院内で血液の状態を顕微鏡で確認するため、結果は比較的すぐにわかります。

輸血

一般的に輸血はA型ならA型、B型ならB型と、同型の血液を使います。ただ、AB型はまれにしかないため、緊急の時はA型の血液を代用することもあります。「B型でもいいのでは?」と思いがちですが、A型に対して強い抗体を持つB型は代用できません。

輸血の副反応(副作用)

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血液型が同じで、交差試験をパスしても、まれに副反応(アナフィラキシーショック)を起こしてしまうこともあります。そうならないために、輸血前にステロイドや抗ヒスタミン剤など、副反応を予防する注射を打ち、もしもの事態に備えます。それでも、輸血の最中に血圧が急激に低下するショック状態に陥った場合は、いったん輸血を中止し、様子を見てから再スタートしたり、治療をしながら進めるなど、安全を最優先に考えて行われます。

家族の一員として一緒に暮らしてきた愛猫が病気になったら、なんとか健康を取り戻してほしいと願うものです。でも、輸血をしたからといって、100%回復するとは限りません。思ったほどの効果を得られない場合や、副反応によって寿命を縮めてしまうこともあるでしょう。病気の治療にあたっては、輸血をするかしないかの選択を含め、獣医師としっかり話し合って最善の道を選んでください。

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