【猫びより】【ハンデに負けニャイ!】知って欲しい! 中野のりんご猫たち(辰巳出版)
猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染した猫専門の保護猫カフェ「ネコリパブリック中野店」は、ポップカルチャーの聖地「中野ブロードウェイ」に近いビルの3階にあった。ドアを開けるとすぐ寄ってくる猫もいれば、耳だけこちらに向けて様子をうかがう猫もいる。みんな、ごく普通のかわいい猫たちだ。(猫びより2017年9月号 Vol.95)
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誤解されやすい “猫エイズ”
猫免疫不全ウイルス(FIV)によって発症する「猫後天性免疫不全症候群」は、ヒトのエイズと同じように、発症すると免疫力が落ちて、普通ならすぐ治る病気でも重症化し、やがて臓器に障害が起こることから“猫エイズ”と呼ばれている。触ったら人にも感染するのではと誤解されることもあるが、これは猫にしかうつらないウイルスが起こす病気。
仲良しな姉妹猫と一緒に引き取られる予定のまいちゃん
たとえ咬まれたとしても人には絶対にうつらない。感染が起こるのは猫同士の激しい喧嘩をきっかけにした血液や唾液の感染がほとんど。喧嘩ほどではないが、交尾やグルーミングでもうつるとされている。しかし感染しても10年以上無症状の〝キャリア期〟がつづく猫や、猫エイズを発症しないまま天寿を全うする猫も多く、特別な世話も必要ない。でも、こうしたことが知られていないため、譲渡ではどうしてもキャリアの猫は敬遠されてしまう。
りんご猫であることも個性
キャリアでも気立てのいい猫はたくさんいる。保護猫カフェを全国に展開しているネコリパブリックは、好奇心をくすぐる言葉でまずは興味を持ってもらおうと、キャリアの猫に“りんご猫”という呼び名をつけた。「親しみやすい名前をきっかけに、りんご猫であることも個性としてまるごと愛してくれる人が増えたらと思っています」とネコリパブリック代表の河瀬麻花(あさか)さん。
「りんご猫と里親さん、両方に幸せになってほしい」と河瀬さん
感染していない猫がいる環境ではりんご猫を隔離せざるをえないが、りんご猫だけなら普通の猫と同じ生活ができる。そこで2016年7月、りんご猫だけがいる保護猫カフェ「ネコリパブリック中野店」をオープンさせた。「ウチのりんご猫は不思議とみんな穏やか。背負っているハンデを知っているみたいに思えるんです」と河瀬さん。やんちゃに遊ぶけれど、確かにみんなおっとりしていて、暢気(のんき)な雰囲気が漂っている。
幸せオーラ全開!! まい・サバ・さつきの猫だんご
犬好きをメロメロにさせたりんご猫
オープンから1年、りんご猫たちは次々に引き取られている。中野店のアイドルとして人気を集めたライくん(♂)は、2016年11月に萩原信行さん・ロザリンさんご夫妻に引き取られた。犬好きだった信行さんがメロメロになり、ライくんはすでに主(あるじ)として萩原家に君臨しているらしい。「りんご猫なので体調に気を付けています。今の課題はダイエット。私も一緒にオヤツを我慢しています」と笑顔のロザリンさん。
イギリス出身で猫好きのロザリンさん。ご夫妻にとってライくんは我が家のプリンス(写真提供・萩原信行)
現在、中野店にいるりんご猫9匹のうち、4匹がすでに里親の家に引き取られる予定だ。それでも里親にめぐり会うチャンスを待っているりんご猫は、全国にまだまだたくさんいる。興味が湧いたら、中野店のかわいいりんご猫たちとまずは触れ合ってみよう!
甘えん坊でやきもち焼きの茶々丸くんも近々ネコリパ卒業予定
ネコリパブリック 中野店
コンパクトでカラフルな店内に9匹のりんご猫
東京都中野区中野5-68-9 AKビル3F
TEL 03-5942-7166
営業時間:14:00~20:00
定休日:水曜(祝日の場合は営業)
http://www.neco-republic.jp
文・吉澤由美子 写真・じゃんぼよしだ