手術症例(軟部外科)
9歳の猫にみられた腸閉塞

症例

スコティッシュ・フォールド(長毛種) 9歳 去勢オス 4.7kg

経過

前日から、頻回に嘔吐し、食欲がないということで来院されました。
おもちゃなどの異物を食べてしまう癖はないが、以前より大きな毛球を吐くことが時々あるとのことでした。

検査所見と治療方針

初診時は検査結果より急性胃腸炎が疑われましたが、院内でおやつを食べる様子も見られたため、点滴と制吐薬での治療を行い、経過観察としました。
しかし、翌日も嘔吐と食欲不振の症状が改善しなかったため、超音波検査を再度実施したところ、胃内に液体貯留と浮遊物を認めました。また小腸に異物を疑う所見を認めました。点滴を行い経過を追いましたが、検査所見に変化がないことから腸閉塞と診断し、内視鏡による胃内の検査および小腸からの異物摘出を行うこととなりました。

◯ 超音波検査所見

 胃内に異常な液体貯留と浮遊物がありました

小腸に異物を疑う所見がありました

内視鏡検査および内視鏡下での異物摘出

全身麻酔下で内視鏡検査を行い、胃内に大きな毛の塊を認めたため、内視鏡で確認しながら摘出しました。

手術

内視鏡では届かない小腸に異物を見つけました。正常な小腸と比べ、太く赤くなり閉塞しています。腸を一部切開し閉塞物を摘出した後、腸を縫合し閉腹しました。

◯ 摘出した閉塞物

今回の腸閉塞の原因は毛球でした。

術後の経過

手術翌日から食事を開始しました。腸切開を行っているため、少量ずつ頻回の食事となるのですが、全て食べ切れるほどの食欲でした。元気もあり、嘔吐や下痢などの消化器症状も見られず経過良好のため、翌日退院としました。
術後10日目の検診時も元気食欲は安定してました。術創も良好なため抜糸を行い、治療終了としました。

その後も毛球を疑う症状が認められたため、素敵な長毛ではあるのですが再発防止のためカットを実施しました。

コメント

腸閉塞の原因には、異物・毛球・腫瘍などがあります。
異物としては、おもちゃ、ひも状の異物・ゴム・ビニール袋・コルクマットの破片、布素材の物などさまざまです。また今回の症例のように、グルーミングで飲み込んだ毛が胃の中で毛球となり腸閉塞を起こすこともありますので、長毛種の場合は特に注意が必要です。

*異物を誤食した、あるいは頻回な嘔吐が見られた場合は、早めの受診をお勧めします。
*異物の誤食にお心当たりがある場合は、同じものや残っているかけらはとても大切な情報となります。可能なかぎり、ご持参ください。
*特に毛糸などのひも状の異物は広範囲で腸がつづれ、腸が切れてしまう可能性もあり危険です。ご注意ください!

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文責:細谷芽里

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