驚くほど充実した愛護施設 キャット・プロテクション
動物愛護活動では世界のトップを行く英国。キャット・プロテクションはその英国最大規模の、猫に特化した保護団体です。
明るい日差しの入るレセプションまわり
世界的ベストセラー「くまのプーさん」の舞台となったアッシュダウンの森の近くにある本部は元は大学だった場所。シェルター、オフィス、病院、倉庫などのほか、出版部門、猫のケアや飼育者教育の部門、プロパティ管理部門、さらに資産運用部門もあるというから驚きです。
衛生的な環境で手厚くケアされています
メインとなる猫の保護シェルターは猫に快適な21~22度程度に保たれた個別の2階式で、個室から庭に出られるよう工夫されています。保護猫の数は常時平均250匹程度。意外と少なく感じますが、新しい飼い主が見つかるまで長くて3ヶ月と、保護期間は短め。訪問時の6月の時点で、その年すでに350匹に里親がついたそうです。さらに支部でも各々保護・譲渡しています。里親希望者と猫とのマッチングはスタッフが行うのですが、好みより相性や環境をチェックして、それとなくベストな組み合わせになるよう誘導するのが腕の見せ所なのだとか。
敷地の一画に保護ロバもいました
最近ではライブカメラを猫ごとに設置して、お気に入りの猫のスポンサーになる(募金する)という新しい取り組みも始めました。遠くに住んでいて触れることはできなくても、「自分の愛猫」を見守ることができるのです。施設内にはカフェやショップもあり、これを目当てに訪問、帰りにシェルターを見ていく人もいるそうです。
2階建てのケージは上り下り自由。猫の名前や年齢、性格も掲示してあります
ボランティアスタッフは全英になんと1万人、雇用スタッフは500人(本部に200人)。昨年で創立90周年。愛護活動や、飼い方の指導・講習も行います
キャット・プロテクション
https://www.cats.org.uk
博物館の住み込みガイド猫
スコットランドのスターリングにある博物館には、訪問客を歓迎する“ガイド兼セキュリティ”のような役割を担う猫、オズワルドがいます。
お気に入りの椅子で休憩
2004年生まれの彼は、もともと隣に住んでいた人の飼い猫で、子猫の時に博物館に現れ、何度追い出してもやってきました。隣人とともに少し離れた場所に引っ越しましたが、そこが気に入らず、なんとここに戻ってきてしまったとか。そのため、博物館スタッフとして暮らすようになりました。
立派な外観ですが、入場無料。気軽にオズワルドに会いに来て!
ここは美術ギャラリーと街の歴史を紹介するこぢんまりした博物館なのですが、館内のホールでひんぱんにイベントや映画上映会があり、カフェも併設されているため、オズワルドは地元の人に良く知られた人気者。ギャラリーでは彼をモデルにした絵画作品も数点、飾られています。
実はオズワルド、NHKのテレビ番組で岩合さんの取材を受けたことも
オズワルドは展示物の間を案内するかのように先導したり、立ち止まって見るよう促したり。ただ、突然椅子に座って休んだりと猫らしい気まぐれさも発揮しています。オズワルドの物語を子供の教育用の本にしたり、その姿を図柄にしたクロスステッチの冊子もでき、ショップでは数種類のグッズも置かれています。
オズワルドのグッズも販売中
抱っこよりも、館内を歩き回る方が好き
スターリング・スミス美術館&博物館
Stirling Smith Art Gallery and Museum
http://www.smithartgalleryandmuseum.co.uk
(文・石井理恵子/写真・荒木隆師)
Rieko Ishii
ライター兼エディター。
雑誌編集者を経て主にペット、映画、英国をテーマに原稿を執筆。著書は『鉄道ねこ』『パブねこ』(新紀元社)、『美しき英国パブリック・スクール』(太田出版)他多数。現在2匹の保護猫と同居。