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【猫びより】100匹の猫たちが待つ秩父の保護施設【from Japan】(辰巳出版)

【猫びより】100匹の猫たちが待つ秩父の保護施設【from Japan】(辰巳出版)

【Cat News Network】(猫びより 2018年5月号 Vol.99より)

  • サムネイル: 猫びより編集部
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猫たちの幸せを願ってやまない貴子さんとビリー君

猫たちの幸せを願ってやまない貴子さんとビリー君

地元の埼玉県秩父市で30年間、犬猫の保護活動に携わってきた生粋の秩父っ子の引間貴子さんが立ち上げた「笑(ニコ)にゃんこ王国」。「人も猫も安心して暮らせる地域」を目指すこちらの保護施設には、現在100匹の猫たちが暮らしており、オープンシェルターでは里親募集活動も行っている。

貴子さんとスタッフたちの愛情をたっぷりに受けてきた猫たちは、ほとんどが人が大好きで甘えん坊。いくら猫たちへのあふれんばかりの愛情があるとはいえ、猫100匹に対し4人では圧倒的に人間の数が少ないせいか、猫たちは常に誰かに構ってもらうのをワクワクして待ち構えている。施設に入るといきなり「抱っこ!」と飛びついてくるかわい子ちゃんや、足をガリガリ引っ掻いて「遊んで!」とアピールする策略家、いきなり髪の毛を噛むワイルド系に、ずっと後をついて回るプチストーカー系など、それぞれ個性的な猫たちの猛烈なアピールに圧倒される。

自由に動き回る猫たち

自由に動き回る猫たち

20代から「笑にゃんこ王国」に隣接する温泉宿「ばいえる」の代表としてバリバリ働き、結婚式場としても成功させた凄腕の貴子さんは、とにかく明るく元気でパワフルで、猫愛について語り始めるとノンストップな愛すべき女性だ。もともと自宅で犬を飼っていたこともあり、以前は完全に「犬派」だったと笑うものの、今ではすっかり「猫派」に転向した様子。

彼女が「うちの周りは本当に何もないですから」と断言するだけあって、確かに周りは山々に囲まれた風光明媚な土地で、だからこそ都会からのショートトリップにはうってつけの場所だともいえる。もともと井戸を掘るつもりで掘ってみたところ、15年前に温泉が湧いて出たという話にも驚くが、現在そこはレストラン併設の「星音の湯」という日帰り温泉施設になっている。

オッドアイのライス君

オッドアイのライス君

貴子さんが犬猫の保護活動をスタートしたのも、秩父の山奥に人間の勝手な都合で捨てられたり、置き去りにされたりした犬や猫たちを見るに見かねたから。捨てられた犬や猫たちが交通事故に遭い、無残な姿に成り果てるのを、動物好きの彼女はどうにかして助けたかったという。

「この辺はまだまだ野生動物も多いですからね。イタチやイノシシはもちろん、熊も出ますよ。小学生は熊よけのために登下校の際は、チリチリ鳴る鈴をつけています。雪はあまり降らないんですが、冬は気温が一気に下がるので子猫なんかは生きていけないですよ。カラスに食べられてしまう危険もありますし」とのこと。長期に渡り保護活動を続けているうちに野良犬はいなくなったものの、逆に猫の数はどんどん増えていったという。貴子さんはこれまでずっと去勢や避妊にかかる費用、病気や検査のための医療費、エサ代や猫砂の代金も含め、その大半を自分が働いて得た収入から捻出してきたというから頭が下がる。

みんなに人気の猫ベッドでリラックス

みんなに人気の猫ベッドでリラックス

これまで100匹の猫たちのために3階建ての2棟を住居として使用し、4名で世話をしてきたが、建物の老朽化と共にスタッフの高齢化も進み、貴子さん自身も病気をして先行きに不安を覚えたという。

そんな中、貴子さんはこれまで「猫庭プロジェクト」で2度の保護猫シェルターの増設に成功した、山口県「てしま旅館」の猫庭の視察に訪れ、オーナーの手島英樹さんとの出会いから、クラウドファンディングへの参加を決意。猫たちの住居2棟の内、1棟を譲渡専用施設として改築するための目標額180万円をはるかに上回る金額で見事成立させる。人手も資金もなかなか確保は難しいが、少しずつでも猫助けの輪が広がれば、「私がいなくなっても猫たちが路頭に迷うことのないようにしておきたかったんです」と語る貴子さんの願いは、きっと叶うに違いない。

男の子同士なのにとても仲良し!

男の子同士なのにとても仲良し!

笑(ニコ)にゃんこ王国
埼玉県秩父市下吉田483-2
http://www.nico-nyanko.org

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(写真・文 平野敦子)

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